オルヴェンスendC-2 女帝
――――きっとどこかの国の女王様が好きなのだろう。
ヨウコク内ならば国を合併する手もあるが、他エリアの場合は7エリアの花の形を乱すので神様から禁じられているもの。
「オルヴェンズ!」
「いつになく慌てているな、どうしたんだ」
彼は書類に目を通しながら、ペンでサインを連ねている。
「忙しい所を邪魔してごめんなさい」
「作業をしながら聞いてやるからまあ話すがいい」
――とか言ってるけど、作業が止まるか話を聞いていないかのどちらかになるわね。
「貴方には好きな人がいるのよね?」
「いることにはいるが、本当にどうしたんだ?」
驚いたのか、両立ができなくてなのか、オルヴェンズの手が止まる。
「ズバリ、エリア外の女王様ね」
「……」
オルヴェンズはため息をつき、仕事を再開する。
「だからオルヴェンズが結婚しないんだと思っていたのだけど」
「しないのは、する必要がないからだ」
「でも臣下達は早く妃をとってほしいみたいよ。王様って普通は結婚するものだし、意味がわからないわ?」
オルヴェンズの家系にはもう血縁がいない。
その頃まだ幼かった私はわからないが、即位に邪魔になる兄弟は皆殺しにされたという噂はある。
オルヴェンズは貴族にでも国を譲るのかしら。
その場合は国の名が変わり、大公が統治する公国に変わるだろう。
「仕事も済んだことだ。昔の話をしてやろう」
「昔の話?」
●
『皇帝陛下~』
『どうした小さな天使』
『女の王様は女王様だけど女の皇帝はなんというんですか?』
『ああ、それは女帝だな』
『歴代のアンヴァート皇帝には女帝はいないのですか?』
『ああ、いないな。あまり前代皇帝には興味がないから知らぬが』
『え……』
『小さな天使よ、女帝の地位がほしいか?』
『はい!できるならほしいです』
『ではお前を最初の女帝にしてやろう』
●
「ということがあってな、いつでも国を与える気で待っているのだ」
「……その少女はずいぶんと突飛なことをしたのね」
皇帝から国をタダで貰おうだなんていたいけな子供にしてはがめつい。
「それから少女はどうなったの?」
未来の彼女がとっても気になるわ。
「間違いなく豪胆な女だな」
「そうでしょうね」
「ふ……」
「え、なにがそんなにおかしいの!?」
オルヴェンズは滅多にないくらいに笑ってる。
「まだわからないか?」
「なにが……」
「お前が小さな頃に話していたことだぞ」
「え?」
「この国を貴女へやるから、結婚してくれないか?」
「戦で奪う皇帝なのに、金品で交渉するのね」
「戦わずして負けたからな」
「私はどうやって勝ったの?」
「戦は先に惚れたほうが敗けだ」
【crazy 長年悲恋<ひめしこい>】