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ケース1 マリーさん 〜訪問〜

 「ここがマリーさんの家です」


 俺達四人は国王さんが仕事用に用意してくれた馬車で、街外れの一軒家で一人で暮らすマリーさんのところへやってきた。

 最初はどうなるかと思ったけど、仕事となった途端、先程みたいなやりとりはなくなり、真面目な顔つきなった。

 みんなオンとオフが使いこなせるようだ。

 これは介護の仕事をしていく上では大事な事だ。人相手だから公私混同しやすいけど、ちゃんと平等な目線で見る為にオンとオフ、ちゃんと自分をコントロールできないといけない。

 よく田中さんに『仕事で公私混同しちゃだめだよ! それに利用者様に好き嫌いをつけちゃだめ!』って入りたての時よく言われたっけ。懐かしいな。


 「ユータ大丈夫?」

 「あっ、うん、大丈夫! 行こうか」


 俺はそう言って玄関に向かう。

 家は平屋で一軒家だけあってちゃんと庭もあるし広い。

 庭には色とりどりの花も植えられている。

 ん? でも、これは……。



ーーーーー



 「おはようございます! 介護支援事業所、勇者のユータです!」

 「はーい、どうぞあがってください」


 俺は事業所の名前を恥ずかしいながらも口にし、挨拶をする。

 ちなみにユータって言ったのはこの世界では一般人にとって、苗字は一般的でない為みんなのアドバイスによって親しみやすく感じてもらう為にユータと名乗る事にしたのだ。

 それにしてもこの名乗り方だと自分が勇者って言っているようにも聞こえるし嫌だな。


 「おじゃまします!」


 俺は声をかけ中に入る。

 そして、俺の後ろを同じように「おじゃまします」と言って三人はついてきた。

 それにしても異世界でいい事は上がり框がない事だよな。

 日本では足腰が弱ると外出する時、上がり框が必ずネックになるのに。

 まぁあっちの世界でも外国では上がり框がないけど。

 段差は足腰が弱ると昇り降りの時、障害になるからな。

 それだけじゃなくて、車いすを使用する時も段差が高いとスロープを設置したりしないといけないし。


 「よくいらっしゃってくださいました勇者様」


 中に上がって出迎えてくれたのは椅子に座った顔にしわがあり、見た目は日本でいう八十歳くらいの女性だった。

 背は百五十くらいだろうか? 少し小柄で痩せていて背も少し曲がっている。

 でも、ティナに前もって聞いていた情報によると、年齢は六十七歳らしい。

 まあ今でこそ日本は寿命が延びて若々しい高齢者が増えたけど、俺が小さい時くらいは同じ年齢でも見た目はもう少し年を取った感じの人が多かったもんな。


 「初めましてマリーさん。僕は今回マリーさんの生活の援助の方向を一緒に考えさせてもらうユータと言います」

 「あらまぁ、丁寧なあいさつありがとうございます。でも、一緒に考えるって……勝手に決められるのじゃないのですか?」


 マリーさんは不思議そうな顔でこっちを見てくる。

 後ろを見ると、ティナ達も不思議そうな表情を浮かべている。

 これが漫画だったら頭の上に『?』が浮かんでいるな。


 「いえ、違いますよ。僕はマリーさんと一緒にマリーさんの生活が良くなるように一緒に考えていく役割ですから。だから、いろいろお話聞かせてもらって、いろいろ提案させてもらって一緒に決めていきたいと思います」


 ケアマネの研修の時によく言われたっけな。


 『ケアマネがすべて決めるんじゃなくて一緒に考える。押し付けの介護にならないように。一緒に目標を考え本人主体のプランを立てないといけない』って。


 ケアプランは結局のところ自立支援、生活支援になってくるから本人も一緒に考えてもらわないといけない。

 そして、ただサービスを使うだけじゃなくて生活に目標を持ってもらって『QOL(生活の質)』が上がるように支援していかなくてはならない。

 だから、いかに自分でその目標を達成しようと思ってもらうか、意欲を持ってもらうかが大事となる。


 「まぁそうなの?」

 「はい、だからいろいろお話聞かせてもらってもよろしいですか?」

 「えぇ、こうして一人で家にいるからお話しできてうれしいわ。是非ともお願いします」


 そう言ってマリーさんは俺に微笑んでくれる。

 よし、少しは関係性が築けたかな?

 さあ、アセスメントの開始だ!!


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