異世界の洗礼?
「勇者様こちらです」
結局、俺はあの後どう答えても国王さんが引き下がってくれなかったので、とりあえず三人を受入れ住む家に連れてきてもらった。
でも、嫁にするとかそういうのはとりあえず保留にしてもらった。
これはやっぱりお互いの気持ちが大事だからな。
うん。
こういう世界では政略結婚とかあるんだろうけど、日本生まれ日本育ちの俺には抵抗があった。
まぁ可愛い子三人と一緒に暮らすっても抵抗あるけど。
でも、よくよく考えたらこの世界でケアマネをするにしても異世界の知識がない俺にはこの三人は必要になってくると思うし。
それにしても移動に馬車とは……やっぱり異世界なんだな。
「ありがとう。……って家でかいな、おい!」
俺が連れてこられた家は城から歩いて少しのところにある屋敷だった。
最初は城に住まないかって言われたけど丁重にお断りをした。
ずっと監視されているみたいなのも嫌だし、プライベートがなそうだしな。
俺はやっぱり仕事とプライベートは分けたい。
ただでさえ、ケアマネって仕事とプライベートが混在しやすいのに。
俺が案内された家は二階建ての家だったけど、日本の一軒家を横に三つ繋げたくらいはある。
アパートの1DK暮らしの俺からしたら想像もつかない。
「いえ、それほどでもありません。ここは以前、来客の貴族の方に泊まってもらうところでしたが、別の家を建てましたので……急だったので新しく建てる事が出来ずに申し訳ありません。新しいのを建てると父は言ってしましたがーー」
「大丈夫大丈夫! 国王さんにここでいいって言っておいて!」
「……いいのですか?」
「俺は大丈夫!」
てか、これだけの家を日本で買おうとしたら絶対ケアマネとかじゃ無理だしな!
「でも、ティナは大丈夫なのか?」
「はい、私は勇者様の傍にいれればそれで構いません」
「そ、そう」
なんだか、調子がくるってしまう。
王女の前だからかさっきからリリとマリアは黙ったままだし……。
このままじゃせいかつどころじゃないな。
……よし!
「とりあえず三人並んで!」
俺の言葉に女性三人は不思議な表情を浮かべながらも俺の前に並ぶ。
「よし、今から四人で生活するんだ! 気をつかってたらこれからの生活が苦しい。だから遠慮なく喋ろう! 今から敬語なし! それから俺は勇者様じゃなくて光明優太だ! 前の世界では優太と呼ばれていた! だから優太って呼んでくれ! 俺もみんなの事は名前で呼ぶから!」
俺の言葉にさらにポカーンとなる三人。
でも、一緒に暮らすし俺だってこの世界から帰れないのだったらもう開き直るしかない。
いつまでも気を使う訳にもいかないし。
「で、でも、私は今までずっとメイドで敬語だったので……恐れ多いです……」
「いや、俺が気を使うからいいの! リリも一緒に暮らすんだから遠慮なし!」
「は、はい! ……努力します」
んーまだ固い気がするけど……まぁ、とりあえず一人!
「本当によろしいのでしょうか?」
次はマリアか。
「おう! いいぞ!」
「……良かった! うち気を使うの嫌やねん! ユータいい奴やな! 最初は大人しそうな感じか思ったけど。うちはっきりしん奴は嫌いやしこれからどうしよか思ったけどなかなかやな! これなら、うち嫁になってもええで!」
……えっ?
シスターってこんな感じでいいの?
シスターって日本でいう白衣の天使かと思ったけど……やっぱりどの世界も白衣の天使はいないのか。まぁ人によるんだと思うけど。
てか、なんで関西弁?
それに切替はやっ!
「お、おう、嫁ってのはまぁ……マリアももっとよく考えた方がいいんじゃない?」
「そう? うち直感派やしな!」
直感派ってなんだよ!?
「そ、それは困ります!!」
「おっ、ティナ困るってどうしたんや?」
声を上げたティナに対してマリアが食いついた。
てか、王女に対していいのか!?
「あ、ユータその顔はうちがこんなんでいいのかって思ってるやろ? 実はな、うちら三人幼馴染やねん! だから、遠慮なくていいならこんなんなんや! それよりまさかティナ本気でユータに惚れたんとちゃうか? 今時なかなか若い男も少ないし、かっこいい男って少ないもんな!」
「ち、違うってマリア!!」
「じゃあうちがユータの世話してもいいんやな?」
「いや、ユータさんの世話は私の仕事ですっ!」
「おっ、リリもかいな! 三人ともライバルな! ってか、三人とも結婚したらいいんちゃう?」
「もう! 何言ってるんですっ!」
「マリアったら!!」
完全に主導権も何もかも奪われた俺は一人棒立ちしていた。
……異世界こわい。