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出会いとドラゴン

 目が覚めれば、そこは見知らぬ世界だった。

 何故ここが日本じゃないかって? それは簡単。だって、ドラゴンが目の前にいるからさ。頭を極限まで上に向けてなんとか視界に入れることのできるその巨躯。

 いやあ、正直漏らしたね。ちびっとだけど。それほど怖かったんだよ、ほんと。あんなもんみて漏らさない男がいるなら呼んで欲しいわ。

 で、パンツを濡らした俺にドラゴンは問い掛けてきたわけ。


「私の下着を知らないか」


 ってね。こいつ何言ってるんだと思ったよ。ドラゴンが下着なんかつけるわけないだろうって。だけど、詳しく話を聞くと、納得したよ。

 ドラゴンは人の姿になれるらしい。驚いたといえば驚いたけど、ドラゴンなんて超常の生物がいるんだから、そんなことも有りえるんだろうって納得したさ、うん。裸で歩くのは品性がないことだって、俺に黒くてでかい頭を近づけて言うんだ。断れるわけもなく、俺はオーケーしたよ。食われたくないし。

 周りは深い森でさ、たまたま俺が居る場所が開けているだけで、何を探すのも大変そうだったよ。必死に探したけど、見つからないわけだ。日が暮れて真っ暗になっても駄目だった。

 もう諦めよう? って言ったら、ドラゴンは涙目で首を振るわけ。なんだかかわいらしいと思ったね、ドラゴンなのに。

 互いに無言になってちょっとたった時、俺の腹が壮大に鳴った。朝から何も食わずに歩き回ってれば腹も減るさ。それを聞いたドラゴンは、何を思ったのか、空へ飛び立ったんだ。

 それから数分。ドラゴンは肉塊を口にくわえて帰ってきた。なんだろう、イノシシみたいなやつ。俺が知ってるのとは違ったけど。

 「食え」ってドラゴンは言ったけど、さすがに生では食べられない。幸い薪には困らないほど木はあったから、重い腰を上げて集めて来た。でも、ライターもなにもないのに火は着けられない。途方に暮れた俺を見かねたのか、ドラゴンが集めた薪に暑い息を吹きかけたんだ。すると、火がついたわけ。ドラゴンブレスってやつかな。誇らしげなドラゴンにお礼を言うと、ドラゴンは笑ったんだ。


「人間のくせにおかしなやつだ」


 ってさ。俺は不思議に思って、なんでと聞いたんだ。


「普通は我らを見ると恐怖で逃げ出すだろうに」


 そう返ってきた。今更だと思った。怖いから言うことを聞いて食われないようにしたんだって正直に言ったら、ドラゴンは大きく笑った。俺もつられて笑ってしまった。

 イノシシに火が通ったっぽいから、かぶりつく。仕方ないよね、食器とかないし。

 俺だけ食べるのも申し訳ないから、肉の一部をドラゴンに渡すと、喜んで食べていた。味付けのない丸焼きだけど、空いた腹には抜群にうまかった。

 さすがに夜になると寒くなってくる。日本では夏だったから、俺はシャツ一枚だった。

 冷たい風に身を震わせていると、ドラゴンが鼻息を鳴らしながら、大きくて長いしっぽを、俺に巻き付けてきた。少し堅いけど、暖かくて心地が良い。

 未だ燃えている焚き火を見ながら、俺は安心して目を閉じた。


 二日目、目を覚ませば、ドラゴンが俺をじいっと見ていた。

 とりあえずしっぽから解放してもらうと、今日どうしようかを考え始める。

 森を突破するのは無理だろうし、なにより出たたころで行く当てもない。うーんと唸っていると、ドラゴンが口を開いた。


「しばらく、私と共にいないか」


 魅力的な提案だった。この森には少なくとも前日ドラゴンが獲ってきたイノシシみたいな獣がいるだろうから、強さの象徴的なドラゴンと一緒に行動できるのはありがたい。

 俺は頷くと、よろしくとドラゴンに言った。

 そういえば下着はどうするのかと聞くと、ドラゴンは顔を赤くして仕方がないから裸で行くと言った。

 ふと鞄にジャージが入っていた事を思い出して、俺はそれを取り出した。サイズはわからないけど、これはどうかと聞くと、ドラゴンは嬉しそうに頷いた。

 着替えるから後ろを向いていろと言われ、俺は大人しく後ろを向いた。

 ぼんっと音がしてからおよそ数分。肩を叩かれて振り向くと、そこには女性がいた。

 俺より高い身長、日本や他の国では見たことのない整った容姿。紅い瞳が俺のことを見つめていた

「どうだ、驚いたか」


 女性は言った。最初は誰かと思ったけど、俺の名前の入ったジャージを着ているのを見るに、さっきのドラゴンみたいだ。

 驚いたと素直を口にすると、元ドラゴンの女性は歯を魅せて笑った。

 風がふいて、女性の長い髪が揺れる。黒くて艶のある髪だ。うっとおしそうにしていたから、俺はポケットに入っていたはちまきを渡した。髪を結うには上等ではないと思ったけど、女性は嬉しそうに受け取った。紅いはちまきが黒い髪に似合っていたから、似合っていると言うと、女性ははにかんだ。かわいかった。

 今更ながら、俺は名乗った。女性も名乗ってくれた。クレアさんというらしい。

 クレアさんは水浴びをしていたところ、服と下着がどこかにいってしまったとのこと。彼女の住処であるドラゴンの里には人間の姿でしか入れない決まりがあって、このままでは全裸で帰らなければならなかったという。

 クレアさんはスタイルが非常に良い。女性にしては高い身長に、大きな胸。そしてお尻。全ての女性が羨むだろうと思う。俺は男だけど。

 ジャージの下は全裸であって、下着はない。彼女の大きな胸が俺のジャージを突き上げている。俺の股間も。

 無防備な谷間を見ていると、クレアさんがジト目で俺を見ていた。言い訳するのも嫌だから、いいおっぱいだと言うと、馬鹿者と怒られた。ただ、顔を真っ赤にして言われても

怖くはないよ。

 ついてこいと言うクレアさんに、俺はついて行く。形の良いお尻を見つめながら歩く。ときどきもじもじしたように体を動かすクレアさんに続き俺は視線を外さずに、歩き続ける。 

 

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