■28 マーテル者
「アッペテンは数百名の空賊を雇い入れ、キーツ達を奇襲する計画をたてています」
12班部署にルーネの声が響いた。
「ううううっ……その情報を得るために、情報屋さんの奥さんの裸をみることなっちゃいました。顔をはさまれちゃったよ……おっぱいでかい」
ファンテが半泣き状態でつぶやく。あのあと、情報を得るために露出狂の情報屋の家族からとんでもない洗礼を受けることになったのだ。
「決行日は明朝。残念ながら場所は不明」
「その日取りをきくために、今度は娘さんと息子さんの裸を。ううううっ……小おっぱい。チェリーチェリー!」
「現在、雇われた空賊達はストラード港に潜伏中。地元の銃士に捜索を依頼してます」
「さらに、おじいさんとおばあんさんの裸をみることに。どちらも現役とかいってました。何が現役なんだろう? ううううっ……垂れ下がるおっぱいの乱れ」
「顧客リストにアッペテンの関連会社の名前があったと訊いたが?」
リリーが情報を吟味し言うと、アルベルが答えた。
「はい。最近、あのコンテナ式住居を購入してますね」
「アッペテンは再び奇襲の計画をたてている。キーツ達が教会で襲われたことを踏まえても、まだ細工があり、いつでもキーツ達の居場所を把握できるのあろう。現状の証拠ではアッペテンの方からは崩せぬ。尋問しても知らぬと時間稼ぎをされてしまう。フォルとアルベルは空賊達を追跡せよ。空族の向かう先にキーツ達がいるはずだ。銃士班隊四部隊を控えさせ、空賊、キーツ達もろとも検挙しろ! データバンクの方は?」
「やっと半分です」
ルーネが真鱗のデータバンク装置のボタンを押し答えた。
「いまだにキーツという女が何者かわからんな」
リリーが言うと、机につっぷしたファンテが投げやりにいった。
「キーツさんは男なんですよ。だから女で検索してもひっかからんのだぁ! あー、何も見たくにゃい。大きな胸がぷらぷら~。挟まれちったよ、わたし~ぃ。おっぱいぷるんぷるん。キーっ!」
「妙な腕はしていたけど、あの怖い美人の、腰のくびれは素敵だった。男が女になる。胸も大きくする。わざわざそんなことするなんて、大馬鹿ものだ。なにを考えて……」
とそこで、アルベルは12班と妖精一同全員から白い目で見られていることに気づいた。
「うお! 僕は大馬鹿者だ! 桃真鱗で巨乳になった僕は大馬鹿者だ!」
その無念の叫びが、ルーネに閃きを与えた。
「――まさか……男? マーテル者で男! マーテルで男なんて世界に数十人!」
ルーネがデータバンクの検索性別を『男』に変えてみる。
石から力を引きだすマーテル者は女が多く、精神から力を発現するマラーク者は男が多い。大地母神の意もあり、マーテル者に女性が多いのは、子宮が石とが共振できるためと学説を唱える学者もいるぐらいで、これは固定観念に近い。よって数回ボタンが押されただけで、その結果がでた。
「いました……」
驚愕に彩られたルーネが装置の水晶画面を皆に見せた。
『名前/キーツ・ヘリコニア。性別/男。出身国/ヘリコニア。マーテル/攻撃者。真鱗/単色/青真鱗×2……』
の情報と、短髪で褐色肌をした逞しいキーツの姿が映し出されている。胸もくびれもない正真正銘の男だ。画面中央には生死不明という文字が点滅していたが……
「ヘリコニアの王族だな……」
嫌な国の名前が出たとリリーが苦い顔をした。ルーネが眉を寄せた。
「ヘリコニアは王兄派と王弟派とで内戦があった国だ。始末が悪いことに連合が王弟派、帝国が王兄派を支援したせいで争いは泥沼化し国は荒れ果てた。ヘリコニアは浮雲の産地としも有数でその産出量が尋常でなく、事実上、帝国と連合とで、その利権を求めての戦いといって過言でない。現在のヘリコニアは連合と帝国との間で分割統治となっている」
「ヘリコニアの人々は国を奪われたようなものさ。その憎しみの根は深く、ヘリコニアの人によるテロ行為は近年、格段に残忍さも頻度もあがってきている……」
アルベルが沈痛な顔をした。テロ行為といったがそれは彼らにすれば聖戦だろう。
「確か。キーツの兄であるモールバスは存命していたはず。帝国側についた人物だ。口は堅いと思うが……少しでもキンマに関する情報がほしい。ルーネとファンテの二人で面会してこい」
リリーの指示に、ルーネとファンテが頷く。
「……あなた、どうしたの?」
ルーネが目ざとく気づく。今まで一言も発せず無言であったフォルがぎりっと歯を噛みしめたのだ。勁烈な怒りがその身から湧出していた。
「テロ行為……キーツ……そのために、子供達を集めていたのか……!」
捜査メモ。
キーツの兄であるモールバスの面会へ→




