■21 ソティのお着替え
扉をノックしてやってきたフォルはそれを見て、一瞬、動きを止めた。病室には山のように衣装が溢れ返っている。
「このウソつきめ! 連合は拷問しないっていったじゃないか! これは拷問だ! ピンクのドレスに、銃士服、喪服、魔女っ子服、修道服、猫耳の変なフードも着せられた!」
愛らしいメイド服を着ているソティが恨めしげに唸った。
「……それは、拷問だな」
過去の経験からも、フォルは苦笑する。
「拷問じゃないわ! 失礼しちゃう~。いつか、紫ドレス!」
セフィロナは唸り、決意に燃えた。フォルの隣からアルベルがひょこと覗き込む。
「彼女がソティ君かい?」ふと眼を細め「ほんと捕らわれのお姫様みたいだね~」
「二人とも少し、いいか?」
フォルはいつか行われるセフィロナの計り事に煩悶と口元を引きつからせ、ルーネとファンテを呼ぶ。扉を閉めて廊下に出た。病室からソティの罵る声が聞こえるのはご愛嬌。
「俺はコンテナ住居の実物を見にいきたい。情報屋の方を頼む」
「実物を見るほどなの?」
ルーネが尋ねる。コンテナ住居を見ても事件に関係ある発見があると思えないのだ。
「妖精の知らせってヤツでね。なにか違和感があるんだ。確認したい」
「解ったわ。ただ、あの情報屋……馴染みじゃないと……」
「その点はファンテ君の驚き方しだいだよ」
とアルベルが告げた。
「え! 私の驚き?」
「そうね。裸のは、ファンテだけが見てないものね。透明の彼を見てもらわないと」
ルーネは頷いた。ファンテは意味が解らず、フォル達をきょろきょろと見回した。
「透明の彼……激しく矛盾……透明なのに見ないといけない私。これ如何に?」
ファンテは脳内を疑問符だらけにしてまった。既にその話題は数日前に、フォル達の間で取り上げられていたのだが、ファンテがそれに気づくことはなかった。
「待てー。どこいくのーぉ!」
「あの仮面男に用があるの!」
扉が乱暴に開け放たれた。連合銃士女学生服を着たソティが仁王立ちでいる。
「お前! 覚えているか! お兄ちゃん、どうした!」
ソティの気迫に押されて、フォル達は少々後退してしまった。
「がー! ぽかたんだな! くみゅくみゅ、くみゅーぅ」
ソティは辛抱たまらんという感じで両手をふりふり唸った。
「お兄ちゃんは捕まったというか、その辺りのことだ!」
「……まだ捕まえてないな」
キーツ達が謎の集団に襲われたことは告げない。捜査上の情報を軽はずみに知らせないためでもあるが、ソティに告げたら火に油でなく、火薬を入れるようなものだ。
「そうか。まだか。ふふん。お前達ごときに捕まる訳がないもんな。うんうん」
何度か頷いて納得すると、ソティはフォルに指をびっと突き向けた。
「覚えているか! お兄ちゃんの番号を!」
フォルはあのソティが書いた紙をごそごそと取りだそうとした。
「ぐわー! 覚えてないのか! エクエス78420だ! 言ってみろ!」
「エクエス78……」
言えない。押し黙る。長い沈黙。気まずい空気。刺さるような視線。
「エクエス78420!」
足踏みをしていたソティがこらえ切れず叫んだ。
「エクエス78…420……」
「言えたな。覚えておけよ。紙に頼るな! 魂に刻むように覚えておけ!」
そこでソティは全員から視線を浴びていることに気づいた。全員、呆気に取られていた。
「なんだ! ジロジロ見るな! ジロジロ見ていいのは手品と美人だけだ!」
ソティはぷいっと顔をそむける。
「お! その服、似合っているな。可愛いじゃないか」
フォルが言う。完全に意表をつかれ、ソティは沸騰したように顔を一気に赤くした。
「だ、黙れ、なにをいう! アホ仮面!」
ソティは言われたこと、赤面してしまったこと。それら全てから逃げるように扉を激しく閉め、部屋へ逃げ込んだ。
「あら~。カワイイだって。よかったわね~。今度はこれを着てみて~」
セフィロナの喜色めいた声がきこえ、ソティが罵る声が響く。
「かわいくなーい! いい加減にしろ! お前に脚を治してもらった恩があるから、着てやっているだけなんだぞ。うえ! ソレはなんだ! 水着だと! やめ! やめい!」




