■14 失われた物語
それは神が去っていった“神話とわだつみ”の時代末期のこと。
ある失われたお伽話で密かに語られる二人の魔術師がいた。
「ひとつ勝負をしないか? 私とお前とで、どちらが素晴らしいを魔具を造れるか?」
「魔具は優劣を競いあうために造るものではない。人をより幸せに導くための道具だ」
「くくくっ……そうほざくと思ったよ。ならば、私は明日から十人の人を殺そう」
「なっ!」
「その次の日は二十人。更に次は三十だ。お前は守りたまえ、明日は十人。次の日は二十人と。毎夜毎日と!」
「血迷ったか!」
「血迷ってなどおらぬ。殺すのは、畑に分け与え使う蛮人共だ。服すら満足に着ておらぬヤツラだ。何をしても構わぬではないか」
「彼らは同じ人間だ。我らが使うものではない!」
「その考えは何だ! 虫酸が走る。危険たる思想そのもの。いいや、その考えだけではない。私と同じ名前。同じ時代。同じ魔術師であることで、私とお前は比べられ続ける。全てに虫酸が走る! だから、どちらが上か優劣を決めなければならないのだ!」
「まさか! そんなことのために……」
「そんなことではない! 正しい判断を世に教えるのだ。後世に残るのは私だ! お前が無能であるということをイセルの空に刻んでやるわ! わっはははははー!」
翌日、本気であるという証として、一枚の絵画が届けられた。
乳房をつける貎。白い脚を生やす頭。肉と肉とが融合し、十人の女が生きたまま埋め込まれていた。魔導で延命処理を施され、怨嗟と苦痛の叫び続け蠢く人間塊の絵だった。
「我が妻までもー! 大神よー! これが大神の車輪がなされようことか!」
妻すら犠牲にされた魔術師は狂おしく叫んだ。
これが失われたお伽話に語られる、同じ名のグリカムという魔術師達の物語……
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