第三章:小さな異変
村を出て、早1週間。現在俺は修行も兼ねてフォルシア草原を探索している。
え?早く次の町に行けって?まぁ待て、焦りは禁物だ。とか言って逃げてるわけじゃねぇからな。
草原ということで、此処には様々な野草が自生している。食用もあれば、薬草もある。
「わざわざ薬草持って来なくて良かったじゃん…」
数少ない手荷物に入っている薬草を見て独りごちる。
まぁ結構使うし、多いに越したことはないだろう。今日も俺のポジティブ思考は健在だ。
相変わらず能力も技術も皆無だけど、通常攻撃は当たるようになってきた。
これを機に、草原に広く生息するスライムを大量殺戮する俺。可哀想だけど、俺の経験値として生まれ変わってくれ!
地道に経験値を稼いだ甲斐もあり、遂にLvが1に上がった。よし、この調子でどんどん狩りまくってLvを上げまくってやるぜ!
とか調子こいてると、でっかい魔物に遭遇しちゃったりとか…。
<グルゥァアアアッ!!!>
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!」
出たよ、出ちゃったよ!マジで遭遇しちゃったよ!!
頭には2本の角、背中には大きな翼。身体は鱗に覆われているその姿は正しく…。
「ドラゴンベビー?!この辺りには生息していない筈じゃ…?てか怖っ!ベビーとか言ってる割に顔怖っ!!」
ベビーらしからぬ形相で迫ってくるドラゴンベビー。非常に不本意だけど、今の俺では到底太刀打ち出来る相手ではない。
「仕方無い…、あれを使うか…」
これに頼りすぎるのは良くない。けど、今は緊急事態だ。
俺は独自能力、スルースキルを発動した。
<……グルァ…?>
何事も無かったかのように去っていくドラゴンベビー。
「っ……た…助かった……」
緊張の糸が切れて、思わずその場にへたり込む。…この先、ちゃんとやっていけるのか不安になってきた。
取り敢えず切りの良いところまでスライムを狩った後、野営をすることにした。
と言ってもテントなんて無いから、その辺の草や葉を集めて適当に寝床を作るだけなのだが。
野営と言うより野宿だな。…いや、サバイバルか。
1週間もやっていれば手慣れたもので、あっという間に寝床が完成した。
「よし…、まぁこんなもんか。…そろそろ次の町に行くかな」
現在、Lv.5。まだまだ心許ないが、確実に強くはなってきている。
それに、野営が嫌というわけではないが…、そろそろふかふかベッドが恋しくなってきた。
地道に狩っていたから、お金は宿代と安い武器代くらいならある…筈。
一先ず、明日はスライムを狩りつつ次の町に向かおう。
簡単に予定を立てて、俺は夢の世界へと旅立っていった。
―何故、フォルシア草原に生息していない筈のドラゴンベビーが出現したのか。この異変は何を意味しているのか。
この時の俺は、あまり深く考えてはいなかった。
そして、俺の知らないところで―誰も知らないところで―、少しずつ、歯車は狂い始めていた―。
ユウ「全体的にギャグなのかと思ったら、何かシリアス入ってきたぞ?!この小説、大丈夫か?!」
水ノ神「まだまだ不安定なので、大目に見てやってください…orz」