序章:未来の勇者(予定)の理不尽すぎる日常
皆さん、初めまして。
俺はユウ・ドラルシア。未来の勇者(予定)です。
俺は今、家の庭で草むしりをしています。
…えっ?どうして未来の勇者様(予定)がそんなことをしているかって?
それはこっちが訊きたいわボケェ!!何で俺がこんな平凡且つ地味な作業をせなあかんのじゃボケェ!!雑草さんとこんにちはなんて、そこら辺の餓鬼でも出来るわボケェ!!
「ユウ~?早く終わらせないと、お昼抜きよ~?」
…母親に脅され(言い付けられ)ました、畜生。
作業を始めて、約3時間。
何ということでしょう!荒れ放題だった家の庭が見違えるほど綺麗さっぱりに!匠も驚く綺麗さです!
…というかあれだけ草ぼうぼうになるまで放置してた母親、マジ許すまじ。
「あら、終わったの?遅かったわね」
笑顔で言う母親だが、目は笑っていない。
というか時間間隔おかしくね?俺、相当ハイスピードでフル稼働だったんだけども。
あぁ…、腹が減って力が…、HPがぁ…。
「あぁ、遅かったからお昼先に食べちゃったわ」
言葉という名の爆弾が投下され、俺は力尽きた…。
なんてことはなく、近くの三拍子(安い・美味い・早い)が揃った定食屋へ行き、体力を全回復。
ついでに定食屋のおやっさんの一人娘にして看板娘のマンシー・カッペリアちゃんで癒されて、活力も全回復。
セイリョク?俺はそんな疚しいことなんて全然これっぽちも考えてないぜ。
なんたって勇者になる男だからな!(・`ω・)ドヤァ
え?ウザい?メンゴメンゴm(__)m
「ねぇユウ君、ちょっと良い?」
「おろ?もしかしてデートのおさs「違うに決まってんでしょーがっ!!」ピィィァアッ!!」
「痛いっ!俺客っ!」
マンシーちゃんにお盆で思いっ切り叩かれた(というか殴られた)。
ガンッていったぞ、ガンッて(大事なことなので2回言いました)。スゲー、漫画みてー、じゃなくて!
めっさ痛い。さっき回復したとこなのにもうダメージ半分くらい受けたわ。今ので頭の細胞3万くらい死んだんじゃね?
全く、この子は加減というものを知らないのかね。
「冗談だって…。叩くことないだろ…」
「あら、私ったら!ごめんなさい、ついうっかり手が滑っちゃって」
痛む頭を摩りながら言うと、我に返ったように謝るマンシーちゃん。
まだダメージは残ってるけど、可愛いから許す!
「えーっと…、それで?俺に何か話があるんだろ?」
「えっ?…あぁ、そうだった!」
俺が話を振ると、思い出したように手を打つマンシーちゃん。
おいおい、忘れてたのかよ…。
まぁ、この子って抜けてることが多いからなぁ。
単純にそこまで重要じゃないだけかもしれないけど。
「あのね、ユウ君……」
何処か言い難そうに口を開閉するマンシーちゃん。
……ん?これは…、もしや……?
「えっと…、何て言えば良いのか…」
おろおろ?まさかのまさか?
「えっとね、1回しか言わないから、よく聞いてね」
そういう展開な感じだったりする感じ?
「私ね……」
おぉっとぉぉぉ?!
「ユウ君の「ちょおぉぉっと待ったぁぁぁぁ!!」えっ?」
これはイカン、と待ったを掛ける。
女に言わせちゃ男が廃る。そういうことは男の方が先に言うってのがセオリーだろ。え?考えが古い?俺は昔ながらを重んじる男だからな!
「ユ……ユウ君……?」
「いや、こういうことは男から言った方が良いんだ。決心して言おうとしてくれたマンシーちゃんには悪いけど…、言うぜ!俺はっ!!」
男の中の男、勇者(予定)のユウ!行きます!
「俺はっ!!前からずっと貴女のことg「おいユウ、お前、飯代まだ払ってねぇだろ?」……」
「あっ、パパ。お店の方、大丈夫なの?」
おやっさぁぁぁんっ!!空気読めよ!!KYか?KYなのか?
「おう、だいぶ空いてきたしな。
…ところで、お前はこんな所で何してんだ?うちの可愛い愛娘を連れ回して?」
あ、違う。OB(親馬鹿)だった。
「いや…、あのですね…?これには大海原よりも深~い理由があってですね…?」
「ほーう…、餓鬼の分際で偉く立派になったもんだなぁ?」
おやっさん…、顔が怖いっす…。特に目が。
笑顔だけど目が笑ってないって、こんなに恐怖心を煽るものなんだな。母親もそうだけど。
「こんの……、糞餓鬼ぃぃぃっ!!」
「まだ何にも言ってないのにぃぃぃ?!」
理不尽すぎます、おやっさん。
俺の人生は本当に理不尽だと思う。
突然どうした、と思う奴もいるだろうが、まぁ聞いてやってくれ(俺の愚痴を)。
「何で能力も技術も皆無なんだぁ!!」
そう、俺には冒険者になるために必要不可欠な能力も技術も持ち合わせていなかったのだ。
それが発覚したのが今から約30分前。しかも産まれた時からそうだったらしい。
勇者になるとか何とか言っておきながら…、何だよ俺、超カッコ悪いじゃん…orz
いやいや、マイナス思考に陥るな俺。ポジティブに考えろ俺。
「何だよっ!能無しの俺は黙って草でも毟ってろってかっ!」←最早ただの愚痴。
逆ギレしたところでこの事実は変えられないけど、今の俺は叫ばずにはいられなかった。
「……まぁ、低レベルの魔物なら倒せるだろ」
どうしても諦め切れない俺は、物理的にでも力を付けようと村近くの草むらで剣(木の枝)を振るうが…。
「ダメージ…、0…だと…?!」
倒すどころか、掠り傷一つ付けられない始末。
「…あ、やべ。こっちに来る。…あれ?」
そして彼ら(魔物達)からも相手にされない始末。
あれー?襲ってこないのー?
此処で俺は唯一の能力、ポジティブ思考を使った!
そうか、あれは俺の強さに怖気づいて逃げていったんだ。さも無視を決め込むようにして関わらないようにしていたんだ。
俺は新たな能力、スルースキルを会得した!
……何か、自分がとても惨めで可哀想に思えてきた。
【追記】
マンシーちゃんが言おうとしたのは「ユウ君の今までのツケ(飯代)、立て替えといたから早く払って」という、ただの請求でしたとさ☆
ユウ「何だよそれ!フラグ立てといてポキッてか!寧ろ俺が自分で折ってやるわボケェ!」←ポジティブ思考で回復しました。