DOLL
身動きとれない
鳥のように籠の中にいるわけでもないのに
犬のように躾られているわけでもないのに
ただ見えない糸で吊されて
自分の意思では動けないだけ
あの子がボクを見ている
無邪気な笑顔が大好きで
それだけで頑張れる
でも…
何も出来ないボク
君に話しかけることも
君の涙を拭うことも
君を抱き締めることも
悲しくても 涙さえ流せない
心の叫びが君に届くことはない
君だけに届いて欲しいこの気持ち
あぁ神様願いが叶うなら
願わくは
一日だけ人間にして下さい
君に話しかける為の声
君の涙を拭う為の指
君を抱き締める為の腕
君に会う為の身体
願いが叶うのならば
この身を差し出しても構わない
ボクの想い届け…
「どうしてないているの?」
彼女は決まっていつも此処で独り泣いている。
一ヶ月前、彼女の恋人が此処で交通事故にあって亡くなってしまったのだ。
いつもいつも泣いている彼女を見ていると、枯れてしまうのではないかと心配になる。
《義行さん…?》
彼女の呟いた声は、ボクには聞こえず首を傾げた。
《ごめんなさい…貴方が彼に似てたから…》
無理に笑っている彼女を見て、ボクは抱き締めずにはいられなかった。
「今日一日ボクが彼の代わりになってあげる。」
自分でも何を言っているのかわからなかった。
だけど彼女に笑って欲しくて、無意識に口走っていた。
「行こう!!」
ボクは有無も聴かずに、彼女の腕を引いて走り出した。
「まずはショッピングだ。」
ブランド店を何店も歩いて彼女に合う服を探した。
ちょっとしたプリティウーマンごっこみたいで楽しかった。
「そろそろ食事にしようか。」
二人でファーストフード店に入った。
前から一度言ってみたかったんだ。
不意に彼女が笑った。
《口の周り汚しすぎよ!!》
ずっと見たいと思っていた、笑った彼女は凄く可愛くて、ボクは少しの間見惚れてしまった。
《どうしたの?》
彼女が心配そうに見てきたので、ボクは慌てて冷静を装った。
ボクが彼女に次は何処に行きたいかと聴くと、彼女は遊園地に行きたいと言った。
ちょっと意外な答えにボクは吹き出してしまった。
《やっぱり遊園地なんて子どもっぽいかな?》
照れながら言う彼女が可愛くて、愛しいと思った。
【遊園地】
話には聞いていたけど、本当にいろんな乗り物があった。
ボクの方が興奮して、彼女を連れ回した。
時間が過ぎるのは早い。
もう夜になってしまった。
やっぱり最後は観覧車と言うことで、二人で乗り込んだ。
頂上につく頃には町のイルミネーションが輝いているのが目にはいった。
その時彼女と目が合いボクは、吸い込まれるように彼女にkissをした。
彼女も拒まずに受け入れてくれた。
深い濃厚なkissに身体が熱くなった。
ボクは訳も分からないまま、彼女を連れてHOTELに入った。
そのまま彼女をベッドに押し倒し、ボクは彼女にむさぼりついた。
《っぁあ…》
彼女が甘い声を発した時、ボクは我に返った。
ボクは何をやっているんだろう。
彼女の顔が見れない。
ボクは自己嫌悪に陥っていた。
そんなボクに彼女は
《やめないで…今は貴方を感じていたいの。》
その一言で、ボクの理性は吹っ飛んだ。
朝、彼女が目を覚ました時、ボクはいなかった。
あったのはボクの微かな温もりだけ。
彼女からは不思議と涙は流れて来なかった。
家に帰った彼女の元に一つの小包が届いた。
送り主のないその小包には、男の子の人形と一枚の手紙が入っていた。
『泣かないで。』
彼女は人形を抱き締め泣き続けた。
でも、彼女ならこれからを人形と共に歩いて行っ てくれるよね。