9 日の夏、ヒ逅邂リ廻
「出掛けるんですか?」
普段と違う周囲の様子に戸惑う。外出のために履かされた安っぽいサンダルが不安を煽る。栄養状態が良くなり、少しふっくらした高橋の横を、冬の風が吹き抜けていった。
「サンダル、寒いんですけど。他ないんですか?」
取り調べのときに会う刑事とは違う人物。いかつい顔つきで、怒っているように見える。
「文句言うな!」
低い声で一喝されると、反駁の余地はない。シュンと下を向いて、準備が整うのをただ待つ。
刑事さん、冷たいなぁ。東京の人ってどうしていつもそんなにぴりぴりしてるんだろう。
車までの短い距離すら、ビニールシートで遮られている。屈強な刑事に挟まれて座った座席が、思いの外快適で驚いた。目張りの向こうから光るフラッシュに戸惑いを隠せない。
「……凄い。芸能人みたい」
隣から聞こえた嘆息に唇を噛み締める。腰に巻かれた紐にはまだ慣れず、違和感があった。
無言の車はどんどん進み、見慣れた風景が見えてきた。人気のないトンネルの入り口で提出すると、どこからかまたフラッシュが光った。
「降りなくていいんですか?」
訊ねると降りる必要はないらしい。ならばなぜわざわざ来たのかと首を捻るが、形式上必要なのだろうと納得した。
とりあえず説明すればいいのか。高橋は窓越しに指を指す。
「あそこで切りました。ノコギリを使って……棄てたのは、左のほう」
小屋のような建物を指差し、さらに山奥を指し示す。
「スーツケースに入れたよね? 解体したのに、なぜ?」
視界の隅でフラッシュが光った。眩しいわけではないのに、なぜか無意識に瞬きをしてしまう。
視線が右上を彷徨う。思い出すように瞳を閉じ、そした開口した。
「箱入り娘、みたいな」




