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神さまに逆らうな!  作者: つなかん
三章 死角
30/53

J 感慨したキザ

 5月18日 水曜日。

 先週は色々あって大変だった。宿題が終わっていなかったのに何も言われなかったのは初めてかもしれない。

 教室は普段通りだった。水曜日だからみんな元気が良い。水曜は一番眠くない曜日だと思う。

 高橋という、一年が演劇部にいるけれど、どうして入部したのはいまだに理解できない。私より身長が低いし、なのに私をたまに見下した表情で見ることがある。友一の中学からの友達で、よく一緒に遊んでいた。嫉妬したこともあった。奴はきっと私のことが嫌いなんだと思う。なのになぜか同じ部活にいる。友一がいないのに、まるで忘れたみたいに明るい。以前よりずっと、快活になった。

 高橋は、わざわざ三年の教室まで昼休みに訪れて来て、放課後部室に来て欲しいと言ってきた。私は最近部活をサボっているし、部員も足りないから、廃部になるかもしれないと、顧問に言われていた。高橋にそれを言ったら、新しい部員を探す、と息巻いていたから新入部員でも紹介されるのだと思っていた。

 でも違った。部室には確かに知らない奴がいたが、そいつは新入部員ではなかった。

 部室のドアを開けると、知らない奴は緑色のネクタイをしていた。ダブってなければ二年なんだろう。私を呼び出した高橋の姿はない。

「あの……私、高橋君に呼ばれたんだけど、あなたは?」

 人を呼び出しておいて待たせるなんて、どういう了見をしているんだろう。私は腹が立っていたが、知らない人の前なので、丁寧な仕草と口調をこころ掛けた。

「僕、二年の安藤っていいます!」

 なんだか妙に張り切った声色だった。うんざりした。頭が痛くなった。生活しているんだなぁと思った。

「あの! 志摩先輩、ですよね」

「え、あぁ……うん。そうだけど」

 そういう会話をしたあとに、なぜか世間話をした。早く帰りたかった。

「演劇部、ですよね。僕オカルト研究会で、部費が下りなくて、大変なんです」

「部費欲しいの?」

 脅迫なのだろうか? と思った。

 でも違う。何の脈絡もなしに『好きです』と言われた。『付き合って欲しい』と続けた。『いいですよ』と答えた。

 馬鹿だと思った。

 コイツは何だか私にあらぬ幻想を抱いている。と思う。

「私もう帰る。じゃ」

 帰るとは言ったけど、家に帰るにしては早すぎる気がした。どうせ家に行っても誰もいない。飯をつくるのも、もういい加減嫌になった。

 日は延びてきているとは思うが、それでも一時間くらい、自虐的に街を彷徨ってみると、暗くなってきた。ゲーセンに行ったらリア充共がプリクラを撮っていた。苛々したが、まぁ家に居るよりはマシだ。騒音の所為か、気分がそれほど落ち込まない。

 UFOキャッチャーに苦戦した。以前付き合っていた先輩は凄く得意で、なんでも取ってくれた。安藤には期待できそうにない。私はため息をついた。

「ねぇ」

 と肩を叩かけられて、手元が狂い、また失敗した。声のしたほうを睨んだら、知らないオッサンが居た。

「なんですか?」

 睨んだまま答えて、すぐに後悔した。無視すればよかった。いつもはそうしているじゃないか。でもまぁ、暇だからいいか。

 『バイトしない?』と言われた。小遣いは足りていたけど、気分が変わるかもしれないと思って、面接に行ってみた。

 面接はたいしたことなかった。履歴書がないのに誰も気にした様子はない。電話で結果を報せると言われた。

 キャバクラには木村先輩がいたので、面接のあと少し話したらお菓子をたくさんくれた。家に置いておくとクソ兄貴に取られる可能性が高いので、学校へ避難させることにする。部室には冷蔵庫もあるし、問題ないだろう。

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