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K エゴイズム
相変わらずの汚い部屋は、以前ほど異臭を放つことはなかった。机に噛り付いてその視線が薬品に向くことはない。
「テスト勉強もあるのに、どうしてこんなことしなくちゃいけないんだよ」
兄の昭一はもう帰国したのか家にいない。莉沙は田島のため、本格的に爆弾作りに励んでいた。
結局、実物を作ると関税で開けられたときに困るので、図面だけ渡そうという話に落ち着いた。
「なぁ、どうよ?」
ノックもなしに田島が顔を覗かせる。屋根裏の暗い部屋なのに、最近では頻繁に様子を見るようになた。
まったく、ゲンキンな奴だ。しかし一度任されたことはやり遂げるしかない。
振り返り、鋭く彼を見つめる。
「まかせとけって、馬鹿兄貴」




