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7 ヒロイズム
「なんでいるの?」
清掃服の人物には見覚えがあった。しかし長期休暇でもないこの季節、なぜこんな学校の掃除をしているのか疑問であった。
「え?」
「だから、なんでここに?」
振り向いた清掃服は、やっと莉沙に気付いたらしい。一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに安心したよいな笑顔を浮かべた。
「あぁ。飛行機とバスで来た」
「わざと言ってるなら、コーヒー淹れてやるよ」
「ごめん。学校、留年して、また一年やるのダルいし……。母さんにも、色々言われて……」
「クズとかバカとか?」
「まぁ、そんな感じ」
雑巾をくるくると脱水する田島の様子に莉沙は顔をしかめた。こうはなるまい、と思った。