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ストーリーはかなり早い段階で決まっていた。「デボンの泉」という自作の短編小説を劇中劇のように使って構成する、というのは、恐れ多くも京極夏彦の「魍魎の匣」をイメージしている。ついでにいうとタイトルの「デボンの泉」は「ジュラシックパーク」をもじっている。あちらが「ジュラ紀の公園」ならこちらは「デボン紀の泉」という訳だ。(ジュラ紀は中生代の一期間。デボン紀はもっと古い古生代の一期間)
ストーリーはこうだ。ある作家が昔に書いた幻想小説がある。小説の中で主人公は中国奥地の池に、絶滅したはずの淡水性シーラカンスを発見する。シーラカンスは古生代に誕生し、中生代の終わり、ちょうど恐竜の絶滅と一緒に滅びたと思われていた魚だ。全く架空の話と思われていたこの小説だが、古い寺からこの作家の本名が記名された、シーラカンスと思われる魚の魚拓が発見されたことで、小説自体が実話を元にしたのではないか、という可能性が出てくる。そこで、わが「チームウェンズデイ」が現地の調査に赴く。
本家、川口浩探検隊はテレビの取材という大義があったが、「チームウェンズデイ」は何のために探検に行くのか。動機の部分で疑問は湧いたが、今回は「深く追及しない」という案を採用した。多分、誰かから依頼されたんだろう、主人公・川口浩は持ち前の使命感でもって困難に挑戦する。
話はややこしくなるが、チームウェンズデイには二十年以上前に作った設定がある。MVG第一弾として制作した「水曜スペシャル THE MOVIE 水晶ドクロ伝説」のために作った設定だ。
まず、国際探検協会という団体がある。鉱物資源調査、海洋調査、動物の生態調査など様々な専門分野ごとにチームが分かれていて、たとえば国や企業から調査の依頼を受けると担当チームが派遣される、という仕組みだ。協会の日本支部には七つのチームがあってそれぞれに曜日のコードネームが付いている。川口率いるチームウェンズデイは一般探検部門での活躍がめざましく、そのメンバーは「水曜スペシャル」と呼ばれていた、という設定だ。
要は、ユニフォームの背中にある「水曜スペシャル」のロゴに妥当性を持たせるために作った設定だが、その続編になる「チームウェンズデイ探検シリーズ」ももちろん、この設定を踏襲することにした。