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二〇一二年三月の初め、私はインターネットのライブカメラを毎日監視していた。場所は神奈川県の水源、宮が瀬湖。湖の怪物、いわゆるUMAの出現を待っていたわけではない。湖畔に広がる公園に雪が積もるのを待っていたのだ。冬の時期、神奈川県の平野部は昔ほど雪が降らなくなっているが、平野部で雨が降ると、山間部の入り口である宮が瀬古周辺では雪になることが多い。ここに雪が積もったら自主映画の撮影を敢行する予定で、もう何週間もスタンバイしては、ぎりぎりで中止の決定を繰り返していた。皮肉にもロケハンをした日はいいい具合に雪があったものの、撮影の都合をつけた日には十分な雪がなくなっていたのだ。
今回は雪のシーンが多い。「チームウェンズデイ探検シリーズ 第三弾」の舞台設定がシベリアなのである。
そもそも「チームウェンズデイ探検シリーズ」とは、二〇〇九年に企画した、疑似ドキュメンタリービデオシリーズである。
探検隊は謎の遺跡や洞窟を探検・調査し、未確認生物を追い求める。ウェンズデイというチーム名からも分かる通り、一九八〇年代を中心にテレビ放送された、「水曜スペシャル」という番組にオマージュを捧げつつ、勝手にその後継者を宣言してビデオ作品を作り続けよう、ということで始めた創作活動だ。
実は、一九九〇年に「水曜スペシャル The Movie 水晶ドクロ伝説」というかなり本格的に凝って作った長編自主映画がある。「チームウェンズデイ探検シリーズ」はこの設定のまま、規模を縮小した探検隊のその後の活躍を描く、というコンセプトで撮り始めたものだった。
探検隊の規模を縮小したのにはわけがあった。
二十年以上前の大学生時代に撮影した時の探検隊は総勢7名。それ以外にカメラマンなどのスタッフもいるから、撮影内容によってはかなりの人数になる。当時学生だった我々は、金はないものの各自が自由に使える時間は十分にあったから、そんな人数の都合をつけて撮影することもできた。
しかし、四十歳も過ぎると、企画した本人は自分がやりたいわけだから時間を工面していくらでも都合をつけるが、なかなかメンバーを集めることができない。仕事も大抵忙しいので、休日は休息も必要だし、家族との時間も確保しなければならない。そんな条件で大人数を参加させようとすると、スケジュールの調整はまず無理である。全員の都合がつくのは数カ月に一度、その日が雨なら撮影は中止になって、短編の作品を完成させるのに何年かかるか分かったものではない。
そこで離れ業として、探検メンバーを私と私の三十年来のの親友であるYの2人に絞り、基本的にはカメラマン無し、というスタイルを基本に作品づくりをしよう、ということになったのだ。