7.衝撃
僕らはパトロールを手伝い不安がっている市民のところへ回って、戸締りをしっかりすることや夜遅くの外出を控えるように伝えていく。
途中、幼稚園と保育園も回って子どもたちにも遠くへ行かないように紙芝居を読んで聞かせてきた。
「普段通りのことをしているはずなのに、みんな不安そうだよな」
「だって、爆破事件でしょう? 誰だって不安になるよ。側にいたら大変だし、警察と解放戦線の衝突で市民が巻き込まれることもあり得るし?」
「それもそうだよな。希少種獣人区画は今まで平和すぎたんだよ。みんな何の疑問も持たずに狭い区画の中で人生を終えてたんだからな」
「うん……外の世界のことなんて、考えたこともなかった」
解放戦線の考えていることは分からない。でも、あれだけ主張を繰り返しているということは彼らにも何か言い分があるのは間違いない。
警察官として耳を傾けるのはどうかと思うけれど……外の世界のことを改めて考えると何故か胸の中がざわついた。
「パトロールも終わったし、そろそろ署へ戻ろう」
「そうだな。ふわぁぁ……なんか腹空いたな」
「トパントは相変わらずだね。だから、可愛いって言われちゃうんだよ」
トパントはむすっとしているが、このふくよかな体系と温厚な性格だからみんなに可愛がられちゃうよな。
笑いながらハンドルを握り、パトカーを走らせた。
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署に戻って報告すると、僕たちの元へ刑事課の人たちがやってきた。
その中にはオカフュさんもいて、僕は妙にドキドキして目が合わせられなかった。
「広報課の者にも周知しておいてほしい。これが解放戦線のリーダーだ。ヤツはすばしっこいしいつも顔を隠しているから鮮明には捉えられなかったが……リーダーの名前はビントリス。逮捕したメンバーが漸く口を割った」
僕はその名前を聞いて固まった。
ビントリス? それって……。
尻尾が緊張して震えてるけど、僕の尻尾は服の中だから見えない。
耳と表情で動揺がバレないように、回ってきた画像に目を落とす。
ブレているけど、黒づくめの服に深く被られたフード。
……やっぱり、間違いない。
本来なら、ここで言うべきなのは分かっている。
だけど……僕はもう一度ビントリスにきちんと話をしてみようと決めた。
だから、周知だけしたと見せかけて口を閉ざしてしまった。
「トッカーブ君、大丈夫?」
ふと上から声がかかる。この声はいつも聞いている優しい声だ。
「オカフュさん、お疲れ様です。少し驚いてしまって。これでも警察官だと言うのに……すみません」
「いや、驚くのも無理はないよ。ボクがしっかりと捕まえられなかったからみんなを不安にさせてしまった。申し訳ない」
「オカフュさんのせいじゃありません。立派に仕事もされているし……本当にすごいです」
僕が笑って返すと、オカフュさんも僕を元気づけるように微笑んでくれた。
お返事もまだしていないっていうのに……僕はオカフュさんを裏切っているみたいで、心苦しくなる。
本当に偶然だったけど、オカフュさんが必死に追い込んだ犯人を助けてしまったんだ。
僕は、どうしたらいいんだろう?
でも、真実を知ってしまったんだ。僕も自分の職業を明かしてからビントリスときちんと話したい。
昨日会ったばかりだけど、ビントリスなら話し合いに応じてくれそうな気がする。
本来は怖いと思うはずなのに、何故かそう信じることができた。
「オカフュ、行くぞ」
「はい。ごめんね、トッカーブ君。落ち着いたら……また」
「はい。お気をつけて」
オカフュさんは先輩に呼ばれて行ってしまった。またビントリスの行方を追うのだろう。
僕の家の側には警察官を良く思わない曲者の獣人が住んでいるから、捜査の手が入るには時間がかかりそうだ。
そういう人に限って、権力持ちだったりするからな。とても厄介なはずだ。




