6.自然体
僕は素直に、まだ返事はしていないし今は動揺していてそれどころじゃないとビントリスに伝える。
そして、気づくとビントリスに恋愛相談を始めていた。
「そうか。でも、みんなのアイドルのヤツに気に入られるってことはやっぱりお前が魅力的ってことだ」
「そうかなあ……僕はただのんびりと過ごしているだけなんだけどね」
「先を越されてたってのは気に食わねぇが、ソイツも見る目はあるってことだな。でも、モテ男なら別にトッカーブじゃなくてもいいだろ」
「いや、会ってまだ時間も経ってないのに突然告白してきたビントリスの方がどっちかというとおかしいんだからね? 僕は希少種ってこと以外は特に特徴もないし……」
そう、今日が特別すぎる日なだけだ。
必死に言い聞かせてるっていうのに、ビントリスは納得していないみたいだ。
「いいや、トッカーブは十分魅力的だろ。こう見えても、俺は人を見る目があると思ってる。その俺がお前に惚れたんだ。間違いない」
「自信はないけど……でも、ありがとう。驚いたけど、褒めてもらえるのは嬉しいよ」
僕も自然と笑うと、ビントリスは尻尾をゆらゆらと揺らしながら照れ臭そうにしていた。
+++
僕たちは話しながら、家にあったありあわせの物で簡単な食事を済ませ眠ることにした。
僕はシャワーも浴びたけど、ビントリスは怪我をしているから身体だけ拭くだけにしておいた。
もう少し傷が良くなれば、お風呂も入れるだろう。
「本当にソファーでいいの?」
「あのなあ。家主がベッドで寝ないでどうする。しかも、俺は謎の獣人なことを忘れてないか?」
「それは……そうだね。でも、大丈夫」
彼には言えなかったけど、僕は警察官だ。いざという時は……行動に出てしまうことだってできる。
でも……彼は不穏な動きをしそうな気配は見せていないし、何より話していて僕も楽しかったんだ。
トパント以外で、気楽に話せる獣人は初めてかもしれない。
オカフュさんは素敵だけど、どうしても目の前にすると緊張してしまうからだ。
「僕は明日仕事だから。ビントリスはもう少し良くなるまで家にいるんだよね?」
「ああ。トッカーブが信用してくれるならな。心配しなくてもこの部屋でゴロゴロしてるだけだ。他の部屋には入らないと約束する。お前のプライベートを暴くつもりはない」
「そう。僕も……ビントリスのプライベートには踏み込まないよ。安心して」
「そうか……助かる。ありがとな。じゃあ、おやすみ」
僕もおやすみをして、部屋の電気を落とす。
なんだか慌ただしい一日だったけど、やっとゆっくり休めそうだ。
ベッドに入ってからすぐ眠気に襲われて、気付いた時には眠ってしまっていた。
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次の日、ビントリスを置いて僕は警察署へ向かった。
すると、先に着いていたトパントが僕を手招きする。
「トッカーブ、お前聞いたか? 昨日オカフュさんが傷を負わせたっていう解放戦線のリーダー、まだ見つかってないらしい」
「そうなんだ。じゃあ、オカフュさんは忙しいだろうな」
そんな中で僕を気遣ってくれたなんて。きっとたまたま警察署へ戻った時に僕の元へ来てくれたんだろう。
でも、さすがにトパントにもオカフュさんに突然告白されたなんて言えなかった。
「でも、刑事課が必死に探しているならそのうち見つかるんじゃないかな?」
「それが、唯一監視カメラのない場所に逃げ込んだらしくてな。あの、プライバシーを侵害するなって騒いだ獣人が住んでるところ」
「ああ……僕の家からも近いところか」
「そう。うまいこと行方をくらましたらしい。そこからの足取りがまだ分からないって」
今日はオカフュさんも一日外でリーダーの行方を追っているんだろう。
僕たちにもそのうち、詳細情報がおりてくるかもしれない。
署内はピリピリとそわそわした空気一色だった。
だけど、こういう時こそ広報課は普段と変わらずきっちり業務をこなさないとな。




