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『その縄、魔法につき。〜十九歳の縛術師は、殺さずの技術で乱世を縛り上げる〜』第10話選ばれた朝 完結

夜が終わり、

すべてが解決したように見える朝ほど、

人は多くを語りません。

第10話は、

「勝利」ではなく

「選択のあと」を描く最終話です。


朝の光が、城下に差し込む。

 人々は、何事もなかったかのように歩き始めていた。

 だが、何もなかったわけではない。

 夜の間に、この国は一つの線を越え、そして戻った。

―――

 王城の広間。

 騎士団の前で、アルヴェルト公は膝をついていた。

 処刑はなかった。

 叫びも、暴動もなかった。

 国民は、争いを望まなかった。

 選ばれたのは、今の王。

 完璧ではないが、剣を抜かない選択。

 アルヴェルト公は忠誠を誓い、

 かつての城へと戻された。

 力は、奪われた。

 名誉も、完全には残らない。

 それで十分だった。

―――

 城下の路地。

 リオネルは、縄を巻き直していた。

 近づく足音。

 振り向くと、フィアが立っている。

 何も知らない顔で、空を見上げていた。

「ねえ」

「もう、夜に人は消えない?」

 リオネルは、すぐには答えなかった。

 完全ではない。

 闇は、形を変えて残る。

 それでも――

「ああ。

 少なくとも、選ばれた」

 フィアは、それで十分だというように頷いた。

―――

 城門の外。

 リオネルは振り返らない。

 この国は、自分で選んだ。

 ならば、縛る者は去る。

 名もなき兵士たちの夜は、誰にも記されない。

 それでも――

 この朝は、確かに始まっている。

 リオネルは、旅に出た。


この物語は、

誰かが倒され、誰かが称えられる話ではありません。

アルヴェルト公は生き、

王は続き、

闇は形を変えて残ります。

それでも、この国は

自分で選びました。

だからこそ、

リオネルは去ります。

縛る者が居続ける国は、

まだ選び続けてはいないからです。

名もなき兵士たちの夜は、

記録には残りません。

けれど、

その夜があったからこそ、

この朝があります。

『この縄魔法につき』は、

剣よりも遅く、

だが確かに人を結ぶ力についての物語でした。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございました。



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