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あとがき

 この話を書くきっかけになったのは、少し前にN君と数十年振りに再会したからです。N君はあの頃と同じ穏やかな笑みを湛えていて、変わらない彼の姿をとても懐かしく思いました。

 その話を旧友にしたところ、「あー、めんつゆ君?」と言われ、めんつゆ?!何だっけ?と思い出した次第。そして長年、麦茶の色にこだわっていた理由の原点が判明しました。


 めんつゆ学級会には担任の先生が同席していたのか、私も友人も覚えていません。不在がちな先生だったので、自習と『道徳』という名の自由時間が多かったように思います。当時の母校は副担任制度がなかったので、自習時間にクラスが騒がしくなると手の空いてる先生が教室に注意しに来るというような緩い時代でした。なので、この学級会の時も不在だったのかも知れません。


 クラスで『めんつゆ』というワードが禁句になったのと、すぐ夏休みに入ってしまったので、休暇明けにはこの事が話題になる事はありませんでした。子供特有の飽きっぽさも相俟って、みんな忘れてしまったのだと思います。


 N君とは中学まで一緒でしたが、聖人君子の地位を確立したままでした。恋愛対象には崇高というか、人間のドロドロとした汚い部分が似合わない——今で言うところの『ゆるキャラ』的存在だったのでしょう。卒業まで彼の浮いた話は一切聞きませんでした。


 委員長も相変わらず元気なようです。何事にもやる気のない学年だったので、クラス委員を毎年買って出てくれていたのは有り難かったです。小中学両方で生徒会長を務め上げたと記憶しています。


 年齢を重ねると、当時は苦かった思い出が笑い話になる事があります。

 この話の掲載の際にN君と連絡を取ったのですが、彼の中で「めんつゆ君」と呼ばれたことは笑い話になっているとのこと。ご実家の麦茶は、昔ほど黒くはないそうです。


 しかし苦かった思い出が、ずっと苦いままである事もあります。また同じ出来事でも当事者か否か、または関わる立場が異なれば、感じ方に大きな隔たりがある場合もあります。


 私は友人から聞くまで忘れていましたが、委員長はこの出来事を全く思い出せない様子でした。人生であんなにも『めんつゆ』という単語を聞いた日は、後にも先にもあの日しかないと思うのですが、『めんつゆ』をゲシュタルト崩壊させた張本人が全く覚えていないという事実。

 それを「彼女らしい」と言ってみんなが笑顔になるのは、彼女の人となりがある程度分かる関係性を築けているというベースがあるからです。そういった背景を、描き方で印象操作してしまう事もできる。これはとても怖い事だと思いました。

 

 懐かしい夏の思い出話として執筆させていただいた作品ですが、改めて人との繋がりや感じ方、接し方について考えさせられる良い機会となりました。



数ある作品の中からお読みいただき、ありがとうございました。


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