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コウジン×クライシス  作者: フジオリ カズ
カミカクシ編
6/6

カミカクシ 明

滝視点で今回の解き明かし編です


 今回、洸の意識が消えるのは予想外だった。


 神霊案件はよくあるがこの案件の面倒なところは依頼者が無意識下で加害者であったことだ。


「まさか神ですら魅了してしまうとはな」


 実稜と言ったか、預かることになった少年は無意識に神を取り込んでいた。


 神を取り込んでいたから成長が止まるという症状しか起きなかった。


 今日あったことを思い出す


「もう一人の息子も愛しているんです、でもどうしても実稜の希望を叶えなきゃって義務感に駆られて……


 あんなことをしたかったわけじゃない、息子たちのそれぞれの成長を見守りたかったのに私はなんで


 双子でもあの子達は別々の人間だってわかっているのに…!!」


 息子と引き離してすぐ、憑き物が取れたように泣き出した母親。

 そこですぐに気づいた


「息子さんはカリスマ持ちです」


「ぐす…カリスマ…?たしかに夫はカリスマ的なモデルでしたが…」


「稀に遺伝するんですよ

 カリスマは本人の精神が成熟していれば指導者として大成できるのですが

 そうでない場合、魔性になってしまう」


「魔性…」


「魔性はコントロールできない

 コントロールできないから無意識に人を惑わせ凶行に走らせる

 旦那さんは知っていたのでしょう、貴女が惑わされてしまったと、だから連絡が取れても、もう一人のご子息には会わせなかった」


 賢明な判断だ。

 制御できない執着心を抱いている妻や息子に会わせたらもう一人の息子が歪められる。


「息子さんはしばらく私が預かります」


「でも……」


「息子さんと一緒にいて貴女は今の貴女を保てますか?」


 突き放すような言い方だが、真実だ。

 また息子と会うと彼女は元に戻ってしまう。


「(彼女は息子に生霊を飛ばしている

 その飛ばした生霊を媒介にして彼女の気力を吸い取っている)」


 この世界の神は皆なんらかの制限を受けている。

 デミゴットである半人ですらその制限からは逃れられない。


 他者の成長を止めるといった領域を越境して犯す御業はその対象が一人であってもできない。


「(自分に向けられた執念や生霊をエネルギー源としてその奇跡を起こした)」


 最初はただの慈悲だったのかもしれない。


 しかし魅せられ取り込まれた今、そんな思いは関係なく取り込んだ者の願いを叶え続ける機構になってしまった。


 ここで息子を手放してくれたら被害者を出さずに済むが、あくまで保護者である彼女の判断に委ねられている。

 止められる悲劇は止めたい。


「息子を、よろしくお願いします」


 嗚咽混じりの声で託された。


「……お前もそういう気持ちだったのか?」


 母親が子供を人に託す気持ちはオレにはわからない。

 だが子がいた経験はある。


 妻だった女の気持ちを依頼主の女と重ねて考えてみるが、故人の当時の思いまではわからない。


 今日だけだ、洸にあの蕃神が憑いていてよかったとおもえたのは


「蕃神の加護があるからどれだけ強化されようとこの世界の魔性は効かない」


 それはこの世界にとって異物であるオレも同じだ。

 しかし神を抑えられるのは蕃神が憑いている洸だけだ。


「厄介な目だ」


 まぶたを伏せその上を撫でる。


 この目はいわゆる千里眼と呼ばれる能力を持っているらしい。


 「ちょっとしたおせっかい」と意地悪く笑いながらこの世界から旅立った友人に託された能力だが、知らなくてもいいことまで知ってしまうのは気が滅入る。


「人の胸の内が見れないのなら、なにがあっても意味がないのに」


 なぜ人の心が見えないのかはわかっている。


 今のこの世界の主神が人の心は自由であってほしいと願ったからだ。


 先代の主神も代替わりした今の主神も知っているが終わりにむかっているこの世界で代替わりができたことが奇跡だ。


「オレは妻を取り戻したい

 お前たちはこの世界を存続させたい

 ならお互い目的が世界の存続の先にある限り、協力しよう」


 そのおかげで主神たちはオレに何かと用を頼んでくる。


 洸も、そのうちの一つだ。


「同居人が増えたか」


 元いた世界では四人の子供がいたから洸たちが成人するまでの勝手はわかっているつもりだ。


「また忙しくなるな」


 蝋燭を吹き消し、縁側に出る。


 今日は月もない深い星空だ。


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