表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コウジン×クライシス  作者: フジオリ カズ
カミカクシ編
2/6

カミカクシ 弐

 目的地についた。


 体の芯まで冷えそうなほど冷たい金属の扉を開ける。


「超常にはいくつか理由がある」


 常に一つだけ灯されているランプから火種をもらい、部屋の中心を取り囲むように置かれた蝋燭に火を灯す。


 足元が見えるようになると部屋の中心にある座布団に実稜を座らせ、続いて部屋の中にある蝋燭に灯りを灯していく。


「一つ、科学的に説明がつく自然現象


 二つ、人為的に起こされた人工再現


 この二つは時代や知覚された当時の科学知識によって変化するもので、この二つ以外で起きる異常を超常と呼ぶ」


 揺れ動く蝋燭たちを見てその本数に驚く。


「まずは心霊現象

 よくある悪霊に取り憑かれたからやるお祓いってヤツだね


 これらは取り憑かれている側の気質によって比較的取り除きやすかったり祓いやすかったりする


 モデルの仕事をしていたんだったらどこかで関わる機会があったんじゃないかな」


 実稜を見ると心当たりがあるようでうなづいている。


「そこら辺の死霊や生霊だったら祓えるんだけど実稜のケースは特殊だっていうのはここにくる前に聞いていると思う」


「……成長しなくなるのはおかしいって言ってた」


「そうだね、霊障と呼ばれるモノはアザとか肩が重いとかの範疇で収まるものだ」


 部屋の奥の祭壇の横からラジカセと火をつけたお香と小刀を持つ。


 それらを持って実稜の正面に立つと先に小刀を置き、座る。


「今からお経流すけど気分が悪くなったりしてもこの部屋からは出せない」


「……わかった」


 ラジカセのスイッチを押すと録音されていた滝の声でお経が流れる。


「唱えるとかしないんだ」

「僕よりこの人の声の方がバフがかかるからね」

「ゲームかよ」


 さして変わりはないよ、反射的にそう答えそうになったが下手に緊張をほぐしすぎたらどうなるのかわからない。


 手助けはできるがこういうものは結局本人の意志の力が大きく影響する。


 お香が部屋の中に広がっていくのを感じる。


「さて、霊障はさっき言った通りアザや肩が重いなどの症状が多い

 でもあなたには"成長しない"という症状が出ている」


 この症状は普通の霊媒師や祈祷師には厳しい。


 だからと言って寺や神社に行ってもコレを起こしているモノがモノだけに祓うなんてできなかっただろう。


 確かにこのトラブルの適任は僕だ。


 養父も人からこいつに問題を振れば問題を解決してくれると思われる程度には能力がある。


 でも得意分野が違う。


「霊は基本的に起こせる出来事は一つ一つは弱いものなんだよ

 毎夜悪夢を見せてきり、体を重くして軽く生活に支障を出させたりする程度で

 直接的に命をとれるようなことを起こせるのは一握りだ」


「しかもそれに気づけるのは限られた人だけ。

 被害を受けている当人ですら気づかない場合がある」


「気づきにくいのはただ単に憑いてるやつの影響力が弱いから

 人間だって主張の弱い人の意見は聞こえなかったり、そこにいなかったように感じるだろう?

 それと同じで普段は気づかないし害にもならない」


 読んで字の如く無視だ。

 意識的であれ無意識的であれ意識を向けない。


 意識的であれ、無意識であれそこにいない、いてもいなくてもいいモノとして認識から除外する。


 そしたら気づけば解決していることもある。

 しかしこれは違う。


「次に妖怪関連。

 まあ、これは僕の専門じゃないし今回はあまり関係ないからまた機会があったら詳しい話をするよ


 一応『肉体のある幽霊』だと考えてくれてるといい」


 妖怪に関しては滝が専門だ。

 実稜も親元を離れたらいずれ関わることになるだろう。


「この世界にはさまざまな生き物が存在している

 でもその生き物の中で理から外れたモノも存在している」


 半人は別名、デミゴッドと呼ばれている。

 昔、この世界の先代の主神が自分以外の神を人に落とし込んだのが半人だ。


 そのような経緯のある半人にしか測定できない数値が出ているということは


「あなたは神隠しに遭っている」


「神、隠し?」


 驚いた様子で復唱した実稜の言葉を肯定する。


「神隠しって失踪とかそういうのじゃないの?」


「たしかにそれも神隠しというね」


 どう説明したものか

 うまく符合する言葉が出てこないがそれでも伝わるように説明しなければ

 あやまって伝え過ぎれば知識だけついて今の状態が直しにくくなる。


「神隠しという言葉の意味に人が亡くなった時、神棚に白い布を被し神棚を隠す習慣を指すものがある。

 この状態が今のあなたに近い」


 一呼吸を置く

 大きく刺激しないように言葉を選ぶ。


「問題は誰がきみを隠しているのかだけど」


「……母さん」


「それもきっかけの一つではあるだろうね」


 思いの外、早くに母親を挙げた。


 母親と暮らしているのだから母親が問題でも問題として認識することを拒む子供が多いと聞くのだが、実稜はそれに当てはまらないようだ。


 たしかに話を聞いていたらこの症状のきっかけは母親だろう。


 しかしそれはきっかけでしかない。


「生きてる人が想っている対象に思念体を飛ばす、いわゆる生霊っていうのはあるし実際、飛ばしていたんだろうね」


 話を聞いただけだが、双子の息子がそれぞれ個性に目覚め、別のことをし始めるだけでも揉めたという実績からそういうことをしでかす人だという認識を抱かせた。


 母親が半人であれば自身の体の延長線だと認識すれば成長を止めさせることもできるだろうが、そうでないからこちらに回されてきている。


「お兄さんと最後に会ったのはいつ?」


「小学生の頃だね」


 父親に科学者を紹介されたのなら父親と連絡は取り合える関係ではある。


「実稜、自分がなぜ成長しないのか本当は知っているんじゃないか?」

「……なんでそう思うの」

「移動する前『双子の兄と離されてから容姿が変わっないことに気づいた』って自分の成長が止まった理由を答えた

 それに『二人でやっと一人の人間』って言っていたことからお兄さんに強い執着しているのはわかる」


 なのに父親に引き取られた兄と何年も会わせてもらえていないというのは不自然だ。


 全てを見ているわけではないからこれは僕の憶測だ。


 実稜の双子が一緒にいないといけないという考えを植え付けたきっかけは些細なことだったのだろう。


 二人の息子ではなく双子というラベルをつけた一人として扱う方が都合が良かったのかもしれない。


 そうした周りからの扱いがいつしか義務にに、そして本人の中で気づかない執着になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ