表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女セレスティアは腹黒教団から逃げて自由を手に入れたい!!(目の前で素朴な青年のフリをしているのはこの国の死神皇帝です)  作者: 風野うた
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/40

20 死神皇帝は切れ者王子を諭す

「今日は何の用だ?」


 感情のない声でライルを出迎えた。登城の許可もなく勝手に押しかけた隣国の王子を優しく迎える必要はないだろう。しかも、この男は先ほど大聖堂に押しかけ、我が国の大聖女へ突然、求婚するというあり得ない行動を起こしたばかりなのだから。


「――――何でこんな奴がいいんだよ」


「聞こえない。もう少し大きな声を出せ」


「フレドリック、いや、皇帝陛下。お願いがあります」


 ライルが声を張ってフレドリックにお願いがあると言った瞬間、ミュゼは笑いが込み上げて、書類で顔を覆った。


 第四騎士団・伝令係のベイ卿から聞いた話によるとライルは突然、大聖堂に現れて大聖女様へ結婚したいと告げた。しかし、その場で本人からキッパリと断られたらしい。


 それなのに彼はフレドリックにお願い事をしに来た。ライルはキッパリ断られても、自分がフラれたとは思っていないのだろうか。ベイ卿の言う通り、彼は少々しつこい性格なのかも知れない。


 トレイシーは発言が自由過ぎるため、フレドリックから隣室で控えていろと命令を受けた。今はブルックリンと一緒に執務室とドア一枚で繋がっている仮眠室からこちらのやり取りを聞いている。


「お願い?」


「そうです。この国の大聖女様に求婚する許可をいただけませんか?」


「何故?」


 冷ややかに問う。回答次第では考えなくもないからだ。


「大聖女を買えるほどのお金が出せるのは、隣国の王子である僕しかいない!」


 ライルが爽やかな笑顔を浮かべて放った言葉が最低過ぎて、フレドリックは天を仰ぐ。大聖女をお金で買う?何をバカなことを言っているんだ。――――こいつ、頭がおかしいんじゃないか?と本気で心配になった。


「却下する」


「どうして!?僕が彼女を救おうとしているのに!!」


 何の疑いもなく、自分は正しいと思っている。隣国の王子を皇帝フレドリックが、わざわざ諭す必要はないのだが・・・。ただ、人としてどうかと思う点は注意しておこう。


「ライル、お金で人を買ってはいけないということくらい知っているだろう?大聖女は売り物ではない。彼女は普通の人間で心もある。買われて嬉しいと思うか?――――もし、お前が彼女を心から愛していて、相手もお前のことを愛しているのなら、少しは考えようと思ったが・・・。自分ならお金が出せるなどという傲慢な考えは捨てろ!そして、お前の勝手な思い込みで彼女を救うなんて言うな!大聖女は信念を持って大聖堂で働いている。彼女が自分は不幸だとお前に言ったのか?お前は本当の彼女を知っているのか?」


「――――それは・・・」


 ライルは傲慢と独り善がりな点を指摘され、言葉に詰まる。大聖女が普段はどんな人なのか何が好きなで何が嫌いなのかなんて、一つも知らない。それに彼女の口から不幸だと聞いたこともないし、助けてくれと言われたこともない。何より、彼女がライルのことをどう思っているのかも知らない。――――そして、彼女はライルの求婚をハッキリと断った。


「――――僕の独り善がりな片思いだったってこと?」


「そうだろうな・・・」


「だけど、あの教団は良くないよ!!幹部の悪い噂をよく聞くし、彼女を救い出したいと考えるのはそんなにおかしい?」


「その救い出すという考えも傲慢だな」


 フレドリックはライルに強い口調で続ける。


「まず、国王の制止を振り切って勝手に大聖堂に乗り込んだのは傲慢だ。王子だから許される。王子だから断られない。そして、大聖女を救い出すという考えも傲慢だ。彼女は無能ではない。あの最悪な教団にいても、自分のやるべき仕事をきちんとこなしている。寧ろ、お前より優秀なんじゃないか?この傲慢さと思い込みで見誤り易いという点を自覚しなければ、お前は何度でも同じ過ちを起こすだろうな」


「――――全てを知っていたのか」


「俺は皇帝だ。この国と周辺諸国のことは何でも知っている」


 ライルには友人としてではなく、皇帝として対応する。彼にはこれが一番堪えると分かっているからだ。


「ズルい。そう言われたら、僕は君に勝てない。セレスティア様にはもう・・・」


「――――大聖女を名前で呼ぶのは止めろ」


「いいだろ!名前くらい」


「ダメだ!!」


 フレドリックはセレスティア様という言葉を聞くと、どうしてもセレスを思い出してしまう。どうしてこんなに似た名前なのか。これでは大聖女を名前で呼ぶ度に彼女の顔がチラついてしまう。何か別の呼び名で呼んだ方がいいのだろうか。例えば、ミドルネームとか・・・。


「ねぇ、何で大聖女さまはフレドリックのことが好きなの?あれって、嘘だよね?だって、君は女性になんか興味がないって、いつも言っているじゃないか」


「残念ながら、嘘ではない。俺も大聖女を愛している」


 ミュゼはギョッとした。上司の口から愛しているという言葉が出たからだ。明日は皇都に雹が降るかも知れない。


 フレドリックはどうしてもセレスの顔がチラついて、セレスティアという名を口に出せなかった。女々しいが仕方ない。伝われば良しとする。


「なっ、仕事で忙しいって、嘘だったの!?」


「仕事とプライベートは別だ。悪いが大聖女のことは諦めろ。大人しく国に戻り、国王へ今回の騒動を詫びろ」


「嫌だ!!諦められない!!あんなに美しい人とはもう出会えないって、ルビーのように美しい瞳には僕しか映して欲しくないんだよ!!」


 フレドリックはドキッとした。セレスのルビーのような美しい瞳が思い浮かんだからである。同じ色なのか・・・と心の中で呟く。


「あのサラサラと光り輝く銀髪。いつか触れたいと、どれだけ願ったことか!!簡単に諦めるなんて出来ない!!」


 サラサラの銀髪・・・。――――まさか、同一人物?いや、そんなことはないだろう。これは自分の都合がいい様に解釈しているだけ。セレスと大聖女セレスティアは別人だ。フレドリックは首を左右に振る。


「ライル、お前が恋焦がれているのは分かる。だが、世の中には自分の思い通りにはならないこともあるんだ」


 ライルに言いながら、フレドリックは自分に言い聞かせているような気がしてきた。


「ああ、周りが見えてなかったというのは君の指摘で納得した。だけど、彼女を好きな気持ちは僕のものだ。勝手にさせてもらう」


「それは構わないが、彼女は俺と婚約している。そのうち結婚も・・・」


「はぁ!?婚約ー!!どうしてそれを最初に言わないんだよ!!君、最悪だね。僕がフラれて辛い思いをしているのを面白がって楽しんでいたってわけ?信じられない!!こんな奴のどこがいいんだよ!!」


 ライルはイライラして、フレドリックの机を何回か蹴った。


「ミュゼ、国王へ修理代を請求しておくように」


「御意」


「ああああ!!もう最悪だ!!」


「では、気を付けて帰れ!!」


 ライルはフレドリックに急かされ、執務室から追い出された。素直に帰国してくれると良いのだが・・・と、フレドリックはこめかみを押さえる。これで、大聖女へ求婚するというライルの大胆な計画は全て終了した。


「ふぅ、やはり面倒だったな・・・」


 トントントンとドアをノックする音がした。廊下からではなく、仮眠室の方からである。


「もう出て来ていいですよ」


 嫌そうな顔をしている上司を見て、ミュゼが代わりに答えた。


「うっわ~、フレド、カッコ良かったよ!!落ち着いてビシッて注意するところが最高だった!!」


「・・・・」


「わー、どうした!?フレド、疲れたのか?」


「――――疲れた」


 フレドリックは机に突っ伏せる。


「陛下。お疲れ様です。愛しているという言葉は胸に染みました」


 無神経にブルックリンが胸を抉ってくる。あれは大聖女にではなく、セレスに向けて言った言葉だ。もう本当にこれからどうしたらいいのかとフレドリックは頭を抱える。


「大聖女様って銀髪でルビー色の瞳なんだね。あー、やっぱり実物が見たいよ。爺様、ズルいって!!」


 フレドリックはハッとした。そうか、大聖女に会いに行けばハッキリするじゃないか・・・。いや、期待し過ぎるのは危険だ。別人の可能性の方が高いのだから。


「そうだ!爺様がダメなら。フレドについていけばいいよね!大聖女様に会わせて!!ブルックリンも会いたいよね!!」


「はい、お会いしたいです!!」


「――――いや、断る」


 今更、大聖女と面識がないとは言えず、フレドリックはトレイシー&ブルックリンにしつこく食い下がられ、疲れがドッと増した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ