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レオン

礼拝堂に敷き詰められた薄雪草を無遠慮に踏みつけながら、男は寝台に向かった。

(一歩がでけえなあ)

肩に抱えられたカイは、男の残す足跡を見ながら思った。

(足が長いしでかい)

(首も太い)

(背中もたくましい)

(……この人もおれが美少女ビジュアル生かしてタラシこんだうちのひとりだったりして)

(……)

(なんてな、ないない、あはは)

(あはは……)

「なに笑ってんだ?」

男はカイを寝台に寝かせた。

荷のように担いでいたが、降ろす手つきは優しく、カイの長い髪が背に敷かれないよう整えてやるなど、気づかいもあった。

「まあ泣いてるよりいいけどよ」

男は先ほどとは別人のような、低くかすれた、囁くような声で、カイに言葉をかけた。

「起き抜けに外に連れ出されたんだろ?」

カイは苦笑を浮かべながら頷く。

「無茶させやがる」

男は大きな手でカイのあごをつかむ。

「血色は悪くねえな」

男はカイの手足をひとつずつ手に取り、そっと持ち上げる。

「あの……?」

カイは半身を起こす。男はカイの肩をつかみ、そっと寝台に押し倒す。

「動くな。すぐ済む」

男はカイの胸に手を置く。

(お、犯される!?)

カイの杞憂とは裏腹に、男はカイの胸からすぐに手をどけた。

「……ちいせえ身体だな」

男は深いため息をついた。

「まあ、調子は悪くなさそうだ。どっか痛むか?腹は?」

「えっ?」

「腹へってるなら、なにか見繕ってやるよ」

「あ、いえ、あの、さっき、いただいたんで……」

「そうか。ならいい。今日はもう休め」

男はおもむろに身につけていた上衣を脱ぎ捨て、カイの隣に横臥した。

(え!?なに!?やっぱり犯される!?)

カイは身を固くしたが、男は大きな欠伸をかき、目を閉じた。

「おれも疲れた。寝る」

「えっと……あ、自分、どいた方がいいっすか」

男は眉間に皺をよせながら細く目を開ける。

「休めって言っただろ。お前も寝るんだよ」

「いや、あの、でも……」

「レオンだよ」

「はい?」

「おれの名前だ。今はそれだけわかってりゃいいだろ」

(いや全然よくないんですが)

カイは顔に不満を表したが、レオンは構わず繰り返す。

「寝ろ。――――大丈夫だ。もうどこにもいかねえよ。もう二度とお前の傍を離れたりしない。ずっと一緒にいてやる。安心しろ。お前を脅かすものは、ここには近づけさせやしない」

レオンはそう言うと、また目を閉じ、すぐに寝息を立て始める。

(いや、だから、心配しかないんですけど……)

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