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短編練習  作者: 太川るい
17/28

宿

「こんばんは、ようこそおいでくださいました」


 宿の人間が出迎える。私は無言でうなずく。


「さ、どうぞこちらへ」


 案内されて歩く廊下は、ところどころ照明が切れており、薄暗い。通り過ぎる宴会の間には、人がいないようで明かりがついていない。


「すみません、遅くに着いてしまって」


 歩きながら、私は案内をしてくれている老人にあやまった。老人は曲がった背中を上下させることもなく、静かに私の前を歩いている。


「いいえ。よくあることですので。ここらは、なかなか道が分かりにくいでしょう」


 その声には老人特有の、嗄れた調子があった。


 私はあいまいな返事をしながら、老人のあとをついていった。


 古びた旅館だ。木の張った廊下は、歩くたびにかすかな音をたててきしむ。あたりの空気はどことなく湿っていて、ほこりっぽい。


 老人の歩く速度がゆっくりなためか、この旅館の広さのためか、私はずいぶん歩いたように感じられた。しばらく歩いたあと、老人は私をある部屋の前に案内した。


「お待たせいたしました。こちらがお客様の部屋でございます」


 これまで通りすぎた部屋と同様、ふすまは古びていて、端の方が少し茶色くなっている。鍵はついていないようだった。


「布団はもうお敷きしますか」


 老人が私にたずねる。


「いえ、この後もうしばらく起きているので、自分で敷いておきます」


「かしこまりました。布団は奥の押し入れに入っております」


 老人はふすまを開け、私を中に案内した後、一礼して去っていった。




 部屋の明かりは、既についている。


 私は持っていた荷物を部屋の中に置くと、大きくひと息をついた。


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