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対岸
あちら側から、声がする。
川を隔てている。明かりがぼんやりと夜の暗闇をともす。何か、火をたいているようである。
私はそんな向こうの様子を眺めている。
こちら側には誰もいない。明かりもついていないので、向こうの人々もこちらに人がいることにはそう気付かない様子だ。
「帰ってしまおうか」
焚火のパチパチという音がこちらまで聞えてる。笑い声も起こっている。
私の足の裏には河原の砂利のひんやりとした感触が伝わってくる。
不意に、水音がした。向うの一人が川の中に飛び込んだらしい。笑い声は一層大きくなる。自分はますます無口になる。
対岸の宴は、その後も延々と繰り広げられていた。




