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短編練習  作者: 太川るい
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手帳

 あの人は、いつもあそこにいる。


 こちらから話しかけることはしないが、いつも同じところに座っているので、なんとなく気にかかっている。


 今日は、いつもの手帳を持ってきていないようだ。あの人はその手帳にいつも何かを書き込んでいる。


 すると、あの人は鞄の中から例の手帳を取り出した。やはり、今日も持ってきていたらしい。


 手帳を開く。何事かがこと細かに書き連ねてある。そしてその人は、真剣な表情でその手帳に続きを書き足すのだ。


 そうしている間、あの人は手帳しか見ていない。背を少しかがめて、一生懸命に書いてゆく。そうしてやや時間をおいてそれを書き終わったあとは、満足そうな、満ち足りた表情を見せるのが常だった。


 何を書いているのかは、私にはさっぱり分からなかった。あの人を見る時、こちらとあちらには距離があったし、そうでなくてもあの人の書く文字は、ひどく小さかったから。


 そんなあの人を見ているうちに、私も何か手帳を買おうかという気になった。


 店へ行く。どの品物も、新たな持主の手許に行くのを心待ちにしているかのようだ。


 私は手帳を探した。



 

 無意識に、あの人の持っていた手帳に似た色と大きさのものを選んでいたことに気付いた時、私は自分で自分に苦笑した。


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