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短編練習  作者: 太川るい
12/28

サーカス

「さあお立ち合い、今まで見たことのないような、すばらしい芸をごらんに入れます」


 時代がかった口調とともに、ピエロの格好をした男が往来に立っていた。


 興味をひかれて近付くと、ピエロは愛想よく、私にチラシを渡してきた。




「〇〇サーカス興行 △△公園内にて、××日のみ開催」




 色とりどりの文字と、おそらくは団員なのであろう、男性や女性の姿がいかにも楽しそうに描かれている。


「今時分、こんな旧式のサーカスなどやっているのだろうか」


 私は幼いころ、親に連れられて見に行ったサーカスの記憶をおぼろげながらも思い返していた。記憶の中のサーカスよりも、このチラシのサーカスは古びているように思われた。



 

 チラシを貰った後、私はそれをポケットにたたんで入れておき、折に触れては眺めた。


 存在しないはずのノスタルジーが刺激され、そのチラシはそのあとも私の興味をひいた。


「××日か」


 仕事をしながらカレンダーを見る。ちょうどその日は予定が空いていた。


 入場料に目を移す。大人にしてみれば惜しくないほどの、安い値段だ。


 私は行くことを、何とはなしに決めた。




「お待ちしておりました」


 テントの入り口では、あのピエロが受付をしていた。


「あなたなら、お越しになると思っておりました。今日はどうぞお楽しみください」


 そう言いながら、ピエロは受付を済ませた。


 その顔は、穏やかに笑っているように見えた。


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