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短編練習  作者: 太川るい
11/28

角砂糖

「そうだ、そうだ。その通り」


 全く感情のこもっていない表情と声で同意しながら、男はコーヒーをすすった。


「まったくあなたが正しい」


 それを聞いて、向かいに座る女性は露骨に嫌そうな顔をする。


「茶化さないでください。私は真剣なんです」


 男はコーヒーを半分は飲んだかというところなのに、脇にあった角砂糖を三つほどカップの中に入れた。


 しばらくスプーンでかきまわす。


「真剣に聞けという方が無理でしょう。あなたの話は一から十まで馬鹿げている」


 男が再びコーヒーを飲んだ。やはり甘すぎたようで、渋い顔をしてから、口直しに隣にあった水を飲んでいる。


「私だってわかってます」


 女性はやや落ち込んだように目を伏せた。


「でも、実際にこの目で見たことなんです。どうか信じてください」


 再び顔を上げる。その表情は真剣そのものだ。


「ふむ」


 男は必死に見つめてくる女性の目からそらすように、視線を上方へ移した。


 視線の先では店内の照明が明るく光っている。


「どうにも困りましたな。あなたは本気のようだ」


「最初からそう言っています」


 男はすこし考えるそぶりをしてみせた。


「よろしい」


 男は立ち上って、たたんでいたコートをはおった。


「ひとつ、見てみましょう。あなたの話が本当なのかどうかも、それで分かる。案内してください」


「ええ、すぐにでも」


 女性はほっとした表情を浮かべながら立ち上がった。




 奇妙な男女の組み合わせは、そのまま店を出ていった。


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