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短編練習  作者: 太川るい
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 虫がいる。


 小さな虫である。じっと動かず、傍目からは生きているのか、死んでいるのかさえ容易には判別がつかない。


 しばらく時間が経ってから、ようやく虫はわずかな身じろぎをした。どうやら生きていたものらしい。しかしそこからもまた、虫は長い時間をじっと過ごしていた。


 ――ひょいとつまんでみようか。それとも紙でつついてみようか。横で虫を眺める私にはそんな意地の悪い考えが頭をもたげた。どちらにしたところで、虫にはいい迷惑に違いない。私は思いついてはみたものの、それを実行に移す気にはなれなかった。


 虫がいる。長いこと、そこにいる。


 ややあって、私は席を離れた。少し用事があったのだ。



 

 用事を済ませて元の場所へ戻ると、虫はすでにいなくなっていた。


 あれほどまでに動かなかった虫が、何をどうして自ら動き出す気になったのか、私には見当もつかなかった。


 虫のいなくなった場所をなんとなく離れる気になれず、今度は私が、あの虫のようにいつまでも、その場から動くことをしなくなった。


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