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厳重に警備された一室で2

 彼女の言葉に、ほかの三人も、詮索をやめ、実務的な会話に戻る。


「侵入者たちは、どのような者たちだったのですか」

「地球と、一応の交流のある世界の者たちです。魔法を精霊の力と解釈し、科学技術はまったく未熟。ゲートを破壊することが目的だったようです」

「破壊? 奪取ではなく?」

「ええ。地球の科学技術が彼らの世界に浸透し、精霊信仰が衰退することを憂えたようですね。愛国心の強いことです」


 地球の科学技術は、魔法を日常的に使う世界のそれと比べれば、非常に発達している場合が多い。

 もちろん、なかには地球ではまだ実現していない技術をもつ世界も存在する。しかし、ゲートをもつのは、地球だけだった。


 異世界間の行き来は、当然、ゲートを利用しなくても可能である。

 可能ではあるが、簡単ではない。らしい。

 術式として記せば、非常に複雑かつ長大なものとなる。その術式を起動させるために必要となる魔力量も、膨大だった。


 イメージだけで魔法を構築し、膨大な魔力を行使して魔法を発動できたとしても、世界を移動する際の衝撃に術式を維持することも困難となる。

 万が一、移動の際に魔法が途切れれば、どうなるかわからない。次元のはざまにとりこまれるとする説が有力だが、そのはざまから、生死問わず還って来たものはいない。

 知識、魔力量、精神力、そのすべてが非常に高いレベルで求められるのである。


 悪意をもって地球に不正アクセスを試みる連中のほとんどは、ゲートを目的としている。

 ゲートがあれば、異世界を渡るリスクを大きく減らすことができるためだ。今回の侵入者のように、破壊を目的とするのは珍しい。


「彼らは、どうしているんだい。もう、故郷に帰ったのか」

 姿勢の良い男が尋ねる。

「いいえ。彼らは、たしかにそれなりの使い手でしたが、ゲートに不正アクセスできるほどの手腕はもっていませんでした。つまり、故郷には協力者がいる。

 わざわざ彼らの故郷の事情に立ち入るつもりはありませんが、しばらくはこちらで預かって、どこかの次元に飛ばします」


 土岐の言葉に、大柄な男が眉を顰める。甘い、とでも言いたいのだろう。

 しかし、地球がまがりなりにも現在の地位を保つことができているのは、この不干渉の姿勢あってこそである。

 魔法研究の分野では一目置かれている地球だが、魔法使の戦力では他の次元にとうていかなわない。

 原因はまだ研究途上ではあるが、地球は他の次元に比べて魔法使の絶対数も少なければ、魔法使のもつ魔力量の平均値も低い。

 一説には、その次元の内包できるエネルギー総量は決まっていて、科学技術によって大量のエネルギーが消費されている地球では、魔力として個人に宿るエネルギー量が少ないのだという。実際に、科学技術の進んだ国では、突出した魔法使が生まれる割合が低いことが報告されている。


 ともあれ、他次元へ喧嘩を売ることが得策ではないことは、彼も当然承知していて、軽く鼻を鳴らしただけだった。


「どうせ飛ばすなら、うんと暑いところにしてさしあげなさいな。彼らの水の精霊が逃げ出したくなるくらいに」

「もちろんです」


 土岐はうなずくと、他に二、三の簡単な報告をして座を立った。

 別れの挨拶などというものも、もちろんない。

 存在しないはずの学園に関する、存在しないはずの会談である。

 誰一人として、その場に集まる者たちに、個人的な言葉を発しようとはしなかった。


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