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とある次元で2

「じゃあ、あっちの目的は何だったんだ。メルヴィ吹っ飛ばしたの、お前だろう」

 この問いには、玲はガジャルの予想どおり、ああ、と軽くうなずいた。

「少し気になってな。あの侵入者たち、どう見えた」


 青髪の男との立ち合いを思い出す。否、立ち合いと呼べるほどのものでもなかった。

「簡単すぎたな」

 いくら学園の生徒が優秀だとはいえ、あまりにも簡単に決着がついた。

 生徒たちはこうして演習で他の次元へ渡ることもある。どれほどの戦力を有しているか、探ろうと思えば探ることは可能であるはずだ。あの程度の手合いでは、相手にならないことは、すぐに知れる。

 まして、普段であれば、さらに戦闘に特化した、警備員たちが対処にあたるはずである。

 彼ら自身の意図にせよ、だれかからの命を受けたにせよ、地球への侵入者としてはお粗末すぎた。


 ガジャルの回答は、玲の意を得たものであったらしく、彼は頷く。

「だから、捕まることが目的かもと思って、揺さぶってみた」

「捕まることが目的って、どういうことだ」

「さあ。地球で捕縛されれば、他の次元へ送られる。案外、そのあたりが狙いなのかもしれないな」

 そう言いながらも、玲はあまり気にした風もなく、軽く肩をすくめてみせた。実際、気にしていないのだろう。

 それはガジャルも同じだった。彼らの事情が何であれ、地球のことは地球に任せればいい。


「玲ー、ロケーション確認できたよー。予定より、少し南にずれてるみたい」

 ノイエが声をかけてくる。そちらに視線を向けて、玲は軽くうなずいた。


「予定どおりのルートで行けるか」

「ちょっと危険地帯にかかってるけど、予定どおりで大丈夫だと思うよー」

「いや、意味わかんねぇよ。危険地帯突っ切るのか?」

 思わずガジャルが言うと、ノイエが笑う。

「違うよー。ここが危険地帯。ガジャルの索敵、こういう相手には役に立たないねー」

 言って、頭上を指さす。


 つられて見上げると、木の枝の間から差す光に、きらきらと輝くものがある。

 目を凝らせば、それが巨大な蜘蛛の巣であることがわかった。

 巣の主は、ちょうどガジャルの頭上で、静かにこちらを見ている。


「あれ、倒していいやつか?」

 次元によって、生き物の扱いは変わる。ドラゴンを討伐対象と見なす世界もあれば、信仰の対象とする世界もあるように。

 他の世界に派遣される際には、必ずその土地でのルールを遵守しなければならない。


「資料を読んでいないのか」

「読んだがお前らがいるんだから、おぼえる必要はねぇだろ」

「はぐれたときにはどうするつもりだ」

「何のための端末だ」

 ガジャルの答えにあきれ顔をしてみせた玲は、そのまますぐに後方に跳び退る。

 ガジャルも同様に、その場を退いていた。

 二人が立っていた場所には、蜘蛛のような姿をしたそれが放ったらしい巨大なとげが、数本突き立っていた。


「ティナ! 行くぞ!」

 跳び退った勢いのまま駆け出し、ガジャルは前衛でバディを組むティナを呼ぶ。

「え! 近接で挑む気⁉」

 器用に魔法で足場を作りながら巨木を駆け上るガジャルに、ティナが声を上げる。


「魔法を乱発したら、何が寄ってくるかわからないからな」

 彼女に応えたのは玲で、その冷静な声に、ティナは恨めし気な視線を向ける。

「あんたが重力で落とせば済む話でしょう」

「一緒に何が落ちてくるかわからないぞ」

「あー、もう!」

 観念したようにうなってから、「あの木を登るから、重力で補佐しなさい!」と言いおいて走り出す。


「重力じゃなくても、落とせるのにねぇ」

 あきれたように言ったのは、ノイエである。

 彼女を一瞥してから、玲はティナの命令どおりに重力の術式を発動させた。

 木の幹を縦に貫く一本の線をイメージし、そこに重力がかかるように調整すれば、地を駆けるのと同じように木を垂直に駆けのぼることができる。

 とはいえ、従来の重力を中和してはいないので、ティナには垂直と水平の両方の重力がかかるはずだが、さすがに前衛を務める戦力をもつ彼女は、ものともしない。


「まあ、せっかく二人がやる気なんだ。好きにさせよう」

「はいはい」

「ああ、火は使うなよ。このあたりの木は燃えやすいんだ」

 ガジャルとティナ、さらには玲を、何かあきらめたような表情で見てくる残りの班員たちに、玲は一応の注意をうながした。


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