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ゲート前で


「演習では、地球と親交のある別の次元へ行って、そこでいろんな依頼をこなすんだ」


 演習へ向かうレントとガジャル、ほかの上級生のあとを歩きながら、多喜は千波に請われて演習について説明をしていた。教師に相談して、千波が演習へ向かう先輩たちの様子を見学させてもらえるよう取り計らったのだ。


「依頼って、たとえばどんなの?」

「俺も、一回しか行ったことはないんだが、多いのは害獣の討伐だって聞いてる。モンスターハントって言えばわかりやすいか?」

「なんか、そう言われると、急に楽しそうに聞こえるんだけど」

「まあ、実際は楽しくないから」

「えー、なんで」

「モンスターとはいえ、生き物を狩るんだからな」

「あー……」


 ゲームとは違う、血肉をもった生き物が相手なのだ。

 顔を青くした千波に、多喜は多少あわててフォローを入れる。

「まあ、ほかにも、要人警護とか、街の守備の手伝いとかもあるらしいから」

「そっちのほうが、良いかなぁ……。あ、でも、もしかして戦争、とか……」

「戦争に関連する依頼は受けない。その世界の力関係に地球が関与することはしない」

 きっぱりと否定した多喜に、千波は安堵の息を吐いた。


 彼らが向かっているのは、学園の中心部の地下にある施設である。

 そこに、地球とほかの世界とをつなぐゲートが設置されている。

 当然ながら、正規のゲートは、地球上にはここにしか存在しない。このゲートの存在も、学園が秘匿されている理由のひとつである。


 元々、世界と世界は、次元の壁を隔ててそれぞれに独立して存在している。

 その世界と世界が、ごくまれにつながることがある。魔法使のように、膨大なエネルギーを扱うことができる存在による場合もあれば、自然のエネルギーの暴発による場合もある。

 古来、地球上の各地で報告されている神隠しや未確認生物の出現といったものは、だいたいが、この予期せぬ接続が原因である。


 魔法の存在も、異世界の存在も秘匿されている地球において、わざわざゲートが設けられているのは、この異世界との接触地点を限定することが、本来の目的である。学園に魔法使を集めて監視しやすくしているのと同じ理屈だ。

 実際、学園にゲートが設置されてからというもの、異世界との接続点がこのゲートに集中しているため、神隠しなどの不可思議な現象の報告は、昔に比較すれば件数が減っている。


 そして、この、異世界とつながりやすいというゲートの特性を利用すれば、こちらからも別の次元への道が通しやすくなる。次元の壁を突き破るために必要となるエネルギーは相当なもので、そのエネルギーを扱うための術式も、非常に高度なものになる。次元を渡る力をもつ魔法使など、そうそう存在しないのである。


 学園はゲートを最大限に利用し、他次元からの留学生の受け入れや、他次元への学生の派遣を通じて、他次元との交流を深めている。それもすべて、地球上の魔法使ではない人々の無知と平穏を守るためだった。

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