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【貧乳少女の百合無双】「女に冒険者は務まらん!」と追放されたので、開き直って女の子だけのパーティを作ったら、何故かシナジー発揮して世界最強になっちゃいました!?

作者: アトハ

「ミリア、女に冒険者は務まらん!! よって貴様を我が勇者パーティから追放する!」



 私──ミリア・オアシスは、勇者パーティに所属している冒険者だ。

 私には特に立派な肩書きもなく、なんとただの村人である。


 ……何故、私のような平々凡々な村人が、勇者パーティに所属することになったのか?

 その理由は、話すとちょっぴり長くなる。


。。。。。。


 私の故郷は、辺境のド田舎に存在する「ラストダンジョン村」なんて呼ばれる小さな集落だ。

 ある日、勇者様が村にやってきて「腕に自信のあるものはいるか!」などと、メンバー募集のお達しが出されたのだ。

 どう考えても、私のような平々凡々な村人には無縁の話。

 くるりと回れ右した私を余所に、村人たちは満場一致で私を推薦しやがったのだ。


「外界で常識を学んできなさい!」


 なんて、失礼極まりない言葉を添えて。


 村での暮らしは、とても楽しかった。

 薬草を摘んで、水遊びをして、気まぐれにドラゴンを狩って食べる毎日。


 ──あれは美味だった。

 あまりに美味しくて、村で振る舞おうと持ち帰ったら、みんな顔を青褪めさせていたっけ。


 村の外に出れば、そんな平穏な生活ともオサラバである。

 おまけにいきなり勇者パーティの一員だなんて、私に務まるのか不安だった。



 それでも村人の総意なら仕方ない。

 私は泣く泣く村を離れ、勇者パーティに所属することになったのだ。


。。。。。。




「常識を学ぶか、さもなくば勇者様に要らないって言われるまでは戻ってくるんじゃないよ?」


 ふと村を出発するときに言われたおばばの言葉を思い出した。



(出来れば前者の形で村に戻るのが理想だったけど……)


 どうやら私は、勇者パーティには「要らない」らしいからなあ。



(なら──まあ、戻っても許されるかなあ?)

(う~ん、常識かあ……)



 この3年間の冒険者生活で、少しは身についたのだろうか?

 どうせなら! と私はダメ元で聞いてみることにする。



「勇者様、やっぱり私に"常識"がなかったのが原因ですか?」

「違う! 貴様の持ってるスキル《百合無双》が原因だ!」


 勇者は顔を真っ赤にして怒鳴った。



 パッと顔を輝かせる私。

 少なくても常識が無かったのが原因ではないらしい。


 ドラゴンをワンパンして村に持ち帰ったら怒られた。

 間違えて魔王をデコピンで泣かせてしまい、こってり絞られた。

 常識がないと村で言われ続けた数多の黒歴史が蘇ってくる。

 そんな私が「常識が無かったのが原因か?」と聞いたら「違う!」と返されたのだ。

 これはもう圧倒的成長ではないだろうか?



「百合無双──効果は、パーティメンバー全員にかかる常時発動型の支援効果だったか。

 そこまでは良いが……。なんなのだ、効果量0%とは! 舐めてるのか!?」


 そのとおりだと思う。

 このパーティは勇者様、賢者様、剣聖様の3人と平々凡々な村人である私の4人から成り立つパーティである。

 私以外の3人は誰もが羨む絶世の美男子であった。

 道行く人がすれ違ったら、誰しもが振り返るであろう美男子から成る逆ハーレム。


 ──しかし私は、ちっとも嬉しくなかった。

 異性には、これっぽっちも興味が沸かなかったのだ。

 そんな興味の無さが、効果量0%なんていう結果となって現れたのだろうか。


 もともと私が勇者パーティに加わったのは、村長たちに頼まれたからだ。

 「外界で常識を学んできなさい!」という命令を守るためだ。

 ぶっちゃけ勇者パーティには欠片の未練もない。


「じゃあ! 私に、常識はありますよね!!?」

「あ、ああ……。そんなことより貴様の百合無双は役に立たない外れスキルで──」

「やった~!」


 どうやら私は追放されるらしい。

 しかも勇者から「常識あり!」のお墨付きを頂いてしまった。

 最高すぎる結末である。



 これで大手を振ってラストダンジョン村に帰れる!!


「ありがとうございます、勇者様!」

「……え?」

「これで私は、ようやくラストダンジョン村に帰れます!!」


 苦節3年。

 勇者パーティでの旅は、長く険しいものであった。

 常識を身につけるために周りの顔色を伺い、冒険者らしくあろうと平々凡々に暮らしてきた。

 そんなつまらない日々も、これでおしまいだ。


 手に入れた常識を引っさげ、私はラストダンジョン村に帰るのだ。

 おばばたちに成長した姿を見せられると思えばワクワクした。



「え、ちょ? 追放だぞ、追放? 」

「はい! お役御免なんですよね!!?」


 キラキラした目で勇者を見つめ返す私を、勇者が何故だかドン引きした目で見つめ返してきた。


「え? ミリア……勇者パーティへの未練とか、そういうのは──」

「ありません! 追放ということで、これからも精進していきます。

 これまで、ありがとうございました!!!」


 ぶんぶんと腕を振って、満面の笑みで旅立つ私。

 ──そうして私は、勇者パーティを追放されることになった。




◆◇◆◇◆


《SIDE: 勇者》


「ふあ~。勇者様、おはよう。……あれ、ミリアちゃんは?」

「奴なら居ない。出ていってしまったからな!」


 翌日。

 勇者パーティの空気は最悪だった。

 


「ならこのパーティに用は無い! 俺はミリアちゃんを追いかけるぅぅぅ!」

「癒やしを。癒やしをくれ~~!」

「黙れ、このロリコンどもめ!!!」


 ミリアという少女は、勇者パーティの癒やしを一心に担っていたのだ。



 勇者パーティのメンバーは、実力こそ王国随一であったが、クソザコメンタルの持ち主だったのである。

 そんな彼らはパーティのマスコットたるミリアを撫で回して、心の平穏を保っていたのだ。



 おまけにミリアという少女、ちんまい体からは信じられないほどのパワーを持っていた。

 普段は遠慮しているのか影から見守っていたが、パーティが危機に陥ったときには鬼神のような強さを発揮して、メンバー全員を無事に生還させたこともあった。

 ミリアという少女は、到底、常識では計り知れないと勇者パーティの面々は感じていたのだ。

 ──リーダーである勇者本人を除いて



 勇者パーティのマスコット、兼、切り札。

 しかしパーティのオアシスたるミリアは、勇者の独断で追放されてしまったのだ。


「世界なんて知らん!! 世界よりも俺はミリアちゃんを選ぶぞ!」

「ミリアちゃんの居ない世界なんて滅んじまえ!!!」

「待て! そんな勝手は許さんぞ!」


 勇者はミリアの実力を正しく把握していなかった。

 ついでにマスコット役としても、ミリアには不満があった。主に胸囲の部分で。


 ──勇者は巨乳派であった。

 パーティメンバーは貧乳派であった。

 そう、勇者パーティの趣味嗜好には致命的なまでのズレが存在したのである。



「こ~のロリコンどもが~~!!!」


 方向性の違いによるパーティ解散。

 まあ冒険者界隈では、珍しい事ではないだろうけれど……。



「ってか、まじで……。まじで出ていくつもりなの!?」


 勇者、ポツンと取り残さる。

 そうして勇者パーティは、あっさり崩壊したのである。




◆◇◆◇◆


《SIDE: ミリア》


「ここ、どこだろう?」



 勇者パーティを追放された私は、途方に暮れていた。


 現在地が分からないのだ。

 ついでにラストダンジョン村の場所も分からない。

 パーフェクト迷子である。



(これ、今の私には要らないものだよね?)


 私はついでに、村人から受け取った「常識リング」をポイッと外した。

 なんでも私が持つ桁外れの身体能力を、人並みにセーブするためのリングらしい。

 なんでそんなものを私に持たせたのかは知らないけど──



(常識を身につけるまで決して外すなって言われたけど……)

(勇者様からお墨付き貰ったし、もう大丈夫だよね?)


 私は勇者の困ったような頷きを、YESだと都合よく解釈していた。

 今の私は、常識を身に着けたパーフェクトガールである。




 常識人たる私が、故郷に帰るには?

 私は考え──3秒で答えを出した。


「ま、世間は狭いっていうし、世界中を闇雲に探し回れば見つかるよね!」


 世界とか、まあ一週間もあれば回れるはずだ。

 常識リングを外した私は、自分で言うのもなんだが大抵のことは出来ると思う。



 そんなことを考え──ふと黒歴史が蘇ってきた。


。。。。。。

 

 私が持って生まれた《百合無双》は、所謂(いわゆる)外れスキルに属するものだった。

 そのせいでラストダンジョン村では、私はいつも馬鹿にされていた。

 落ちこぼれだと馬鹿にされても「同年代の男の子になんて負けてたまるか!」と、己を追い込むようなトレーニングを繰り返したのだ。

 その甲斐あってか映えある武闘大会(村の恒例行事だ!)で……

 ──何故か、同年齢の幼馴染(村で一番強かった男の子)を完膚なきまでにボッコボコにしてしまったのだ。


 えぇ……、と同年代の子たちにドン引きされた。

 仕舞いには男の子に泣きながら「外れスキル持ちには、いくら訓練しても魔王には敵わないんだから~!」なんて捨て台詞を吐かれてしまった。

 負け惜しみだったんだろうけど、なんか悔しくて私は一層トレーニングに精を出した。


 周辺を徘徊していたドラゴンはすべて経験値のために狩り尽くし、様子を見に来た神の使者とやらも力試しでボッコボコにした(まあ自称だろう)

 そして力試しで「ラストダンジョン」とやらにも挑んでみた。

 ──結果、ついつい魔王を倒してしまったのだ。デコピンで。


 魔王をデコピンで圧倒して、思えば私は天狗になっていたのだ。

 私、もしかして強いのかも……? なんて思っちゃったのだ。


 だから村人からは「常識を学んでこい」なんて言われたし、暗に世界を見て学べと言われたのだろう。

 世界は広大だ──私より強い人なんて、無限に居るだろう。


。。。。。。



 そう勘違いしては行けない。

 私は所詮はド田舎で生まれ育った平々凡々な村人に過ぎない。


 だとしても幼い頃から幼馴染に煽られ、コツコツ鍛えあげてきた粘り強いメンタルだけは人一倍の自信がった。


「ヨシッ! とりあえず村に行こうか!」


 なお、村がどこにあるかは知らない。

 第六感に任せ、世界を探索するのだ。


***


 そうして歩くこと1時間。



「ユナ! あなたは我がパーティには相応しくありませんわ。よって貴方を私のパーティから追放しますわ!」

「お待ち下さい、マリーネ様!」


 村を探し求めて彷徨っていたら、なんか修羅場に出くわした。



「まあ! また追放の現場に──!」


 常識がなさすぎて気づかなかったが、どうやら冒険者パーティというのは日常的にメンバーを追放しているようだ。

 きっと追放というのは「卒業おめでとう!」ぐらいの意味なのかもしれない。


(また1つ賢くなってしまった……)

(勇者パーティにずっと居たら気づけなかったよね)


 冒険者同士の隠語を1つ学んで上機嫌な私を余所に、目の前で言い争いは続く。



「待って下さい! 私のスキル《貧乳無双》は、必ずしや役に立ちます──!」

「ふざけないで下さい! 名前からして、外れスキルに決まってるではありませんか!

 パーティリーダーの胸が小さければ小さいほどステータスにボーナスを得るなんて……なんてハレンチな……!」


「私のスキルには、きっと無限の可能性が秘められているはずなんです。

 とりあえずその胸の贅肉を削ぎ落として下さい! そうすれば私は無敵になれるんです!」

「ああ? 贅肉ですって、絶対に嫌よ!」


 ユナと呼ばれた少女は、必死に食い下がっていたが、リーダーの女はガンとして譲ろうとしない。

 出ているところは出ているナイススタイル。

 遠目から見ていて分かるボン・キュ・ボン──理想の体系であった。


 往来の真ん中で胸のサイズについて叫ぶ冒険者が2人。

 すっかり注目を集めていたけど──



(まあ、私は常識検定初級だしなあ……)

(きっと冒険者たるもの胸のサイズを絶叫することは、常識を守ることに繋がるんだよね?)


「あの~……」

「何よ!」

「大事なことを話しているのです。ちょっと──」


 私が話しかけると、2人は不快そうな反応をしたが、



「──見つけたわ、運命の人!」


 ユナと呼ばれた少女の方──《貧乳無双》の方だ──が、突如としてそんなことを言うではないか。

 更には──


「あまりにスレンダーな体格! なんと控えめで慎ましい、まさしく私の理想そのもの──羨ましい!!」


 ユナは、突如として私に抱きついて来るではないか。



(!?!?????)


 女の子が、突然女の子に抱きつくのは、やっぱり常識通りなの!?

 困惑していたが──すりすりと私の胸を触ってきたユナは、その行動にあまりにも迷いがなかった。


 ならばこれは、常識なのだろう。

 女冒険者たるもの初対面の女の子にはとりあえず抱きついて、スキンシップを図るべき──また1つ賢くなってしまった。



「あなた名前は?」

「み、ミリアです……」

「ミリアちゃん私とパーティを組んで下さいあなたは私の理想のリーダーそのものでスキルの相性的にもバッチリで絶対に後悔はさせませんとりあえずハァハァさせてください世界最強のパーティを目指しましょう!!」


(なんかやっばい子だ!?)


 ユナという少女は、めちゃくちゃ早口で何かを必死にまくして立てている。

 困惑する私に、げへへと笑いかけてくるユナ。



「ちょっと──」

「追放でしたよね、さようなら」


 ユナは「卒業おめでとう」をした元・パーティリーダーには、見向きもしないようだった。

 まったく興味もないとばかりの態度。


「Sランクパーティよ!? 少しぐらい未練ってものが──」

「理想の女の子と出会えた今、まったく未練はないわ!

 ミリアちゃんとなら、あっという間にSSSランクのパーティになれるもの!」


 あ、なんかどこかで見たことあるような光景……。


 それにしてもユナという少女、恐ろしいほどに我が強い。

 いいや、これぐらいの我の強さというのも、冒険者としてやっていくことを常識的に考えれば(以下略




「ねえ、ミリアちゃん!」

「はいなんでしょう?」

「キスして良い?」

「なんで!?」


 分からない。

 ユナという子のことが、これっぽっちも分からない!


(いいや、これは私に常識がないのが原因なのかも……)

(キスしてみれば分かる──?)


 私はすっかり冷静さを失っていた。

 ユナの勢いに押し流されたのである。


「いいえ、私に新しい世界(常識)を教えて下さい。ユナ様、お願いします!」

「ミリアちゃん!」


 ユナという少女、ノリノリであった。

 驚くほどの積極性で、ちょっとかがんで私の身長に視線を合わせると──




 ちゅっ


 と額にキスするではないか。

 初めてのキスは、爽やかなフルーツの匂いがした。 



『ユナからパーティ申請を申し込まれています。受諾しますか?』

『はい』


 そして私たちは、勢いのままにパーティを結成した。



=======================

スキル《貧乳無双》


・パーティリーダーの胸のサイズに応じて全ステータスアップ

 効果量:AA

 全ステータス9999%アップ 

=======================



=======================


スキル《百合無双》


ベーシック効果

・女の子同士でパーティを組んだときのみ効果発動


LV.1 親密度に応じてパーティ全体のステータスアップ

LV.2 ???

LV.3 ???

LV.4 ???

LV.5 ???

LV.6 解放条件:キスをする 

 天使属性魔法、全使用可能

LV.7 ???


=======================


「あれ? 外れスキルのはずの百合無双が……」

「あれ? 外れスキルのはずの貧乳無双が……」

「「なんかぶっ壊れてる~!?」」



 素っ頓狂な悲鳴が、森の中に響き渡る。

 それは後の時代に、最強パーティと呼ばれることになるパーティが結成された瞬間であった。

・面白かった!

・百合って良いよね!


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― 新着の感想 ―
[一言] 胸のサイズに応じて。 悲しいような嬉しいような……(笑)。 貧乳パーティーじゃないとシナジー効果発動しないという事でしょうか。
[良い点] とても良かったので続き書いてほしいです
[良い点] Lv7とか書いた以上責任を持って全解放するまで書いてください。はよ。
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