3.メイド現る
「どうされましたか、坊ちゃま」
俺はそのメイドと見つめ合っていた。記憶の中から思い出そうとしても思い出せない。というより、こんなに可愛いキャラがいれば忘れるわけない。
「つまり、本編に出てこないキャラということか。」
「何を言ってるのでしょうか、ついに頭までおかしくなりましたか?あぁ、元々頭がおかしかったですね。」
...えっ、口悪っ。何、こいつそんなに嫌われてるの?
俺がそんなことを思っているなか、そのメイドは俺の額に手を当ててきた。
「熱は無いみたいですね。授業中に倒れたと聞いて心配していたのですが、どうやら杞憂だったようですね。」
「えっ、俺、急に倒れたのか?」
「えぇ、家庭教師の方から連絡が入ったのでこうやって心配して来てあげましたよ。ですが、大丈夫なようなので戻らせていただきますね。」
なるほど、その時に俺はレクトの体に入ったのか。
あぁ、聞かないといけないことがあった。
「ちょっと待って。俺ちょっと記憶が曖昧で、えっと、なんて名前だっけ?」
「はい?あなたの大好きな『アイシャ』ですけど、本当に頭おかしくなってしまいましたか?」
「あっ、あぁ、大丈夫、大丈夫。もちろん覚えてるよ。忘れてるわけないじゃないですか。」
(危ねぇ、何とか誤魔化せたか?というより、『アイシャ』か、聞いたことないな。)
俺がそんなことを思っているうちに立ち上がり、
「大丈夫なようでしたら、もう行かせてもらいますよ。私の方はまだ仕事が残っているので。」
そう言うと、ドアの外へ言ってしまった。
(これは、もう少し自分の周りを調べる必要があるな。)
あれから1週間が経ち、俺はだいぶ状況を把握することが出来た。
まず、今俺が居る国は『アースガル帝国』であり、「SOR」の舞台である国だ。この国には、三大家と言われる勢力があり、「カーライル」「オルトロス」「グレオン」の家系である。「カーライル」は、勇者と聖拳が結婚したことで、出来た家系だ。俺はそこに入っている。
「オルトロス」は賢者の家系であり、代々優秀な魔法使いが出てきている。
「グレオン」は剣聖の家系であり、同じく、優秀な剣士が出てきている。
...そして、分かっていたのだが、レクトの評価は周りからはかなり低かった。おそらく、勇者でも、聖拳でもなかったこともあるが、1番の要因はレクトが不真面目だということがあるだろう。両親は、王宮での仕事の為あまり帰ってこず、自分のことを見てくれていないという思いからこうなったと思われる。
(こいつは、ただ寂しかっただけなのか?だから、主人公にあんなにも執着していたのか。)
そして、アイシャのことも調べて分かったのだが、元々は違う国にいたが、魔王との戦争のため、両親を失ってしまい、身寄りがなかったところにゼノンとマァムに拾われて一緒に旅をしていたという。その後、魔王が討伐された後は結婚したゼノンとマァムの元で暮らすためメイドとして、雇ってもらっているという。そして今は、俺の傍付きメイドとして働いておりこの1週間アイシャと話すことで分かったことがあった。
そう、かなり口が悪いのだ。
例えば、今日予定を尋ねれば、
「坊ちゃまに予定なんてあるわけないじゃないですか。それとも私とデートがしたかったですか?すいませんね、今日も屋敷の仕事があるので休みがないのですよ。坊ちゃまと違って。」
とか、朝起きるのが少し遅ければ、
「1人で朝もおきられないのですか?いくら坊ちゃまでも、その程度のことが出来ないとは、メイドとして恥ずかしい限りですよ。」
と、ボロくそに言われる。
どうやら、レクトが小さな頃にアイシャに告白して、振られているらしい。その後からアイシャはレクトをからかうようになったらしい。
などと、レクトの黒歴史が分かったところで、俺も鍛錬をするようになった。主人公に負ければ破滅ルート一直線なので、強くなる必要があるのだ。そのために、午前中は剣術の鍛錬を、午後からは魔力のコントロールをするようになったのだ。こちらの世界では、スキルがあるので、かなりありがたいのだが、魔力のコントロールはかなり難しくゲームのようにはいかない。
今日も剣術の鍛錬をしていると珍しくアイシャから声がかけられた、
「坊ちゃま、今晩は旦那様と奥様がお戻りになられるようです。」
俺は思わず息を飲んだ。
遂に、両親と会うことになった。
次回 両親との対面
次は21時ごろ投稿予定です。