D国と世界情勢
「それで…… また〝あの国〟の関係者か?」
「はい…… 重症化していた70歳以上の女性ですが……」
「あの国に出稼ぎ中の者の祖母に、家族が〝御守り〟を差し入れして…… 直ぐに容態が安定、次の日には退院…… どんな奇跡なんだ」
「その御守りだが…… 買い取りは可能か?」
「それなんですが……」
「どうした?」
「どうやら…… 特定の人物にしか効果が無い様でして……」
「我等が手にしても…… 無用の長物と化すと言うことか……」
「はい……」
「なんとかして…… 国交を持てぬかね?」
「無理に近いでしょうね…… 我々、この国の政治と官僚は嫌われた様ですから……」
「経済的弱者の救済もせずに…… 我等政治家が身銭を切らなかった代償か…… これからも高く付きそうだな?」
「大陸の大統領を通さないと、話せない状況ですからね……」
その場にいた全員の深いタメ息を吐く音が響いた。
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「同志…… あの島の事が解ったかね?」
「はっ、総力を上げて調査中ですが……」
「海の真ん中に一瞬で生まれた島か…… まさに魔法だな」
「ええ……」
「しかし、我々は…… その魔法のごとき現象を放置できない」
「同志よ。その魔法の様な力を…… もし地上で使われたのならば……」
「突然目の前に巨大な敵拠点が現れる訳か……」
「しかし、あの島は…… 大陸の大統領が独立国家として同盟を組んでいる…… 下手に手を出すと、奴等に介入の口実を与える事になるぞ」
「当面は…… 監視をして探るしかあるまい」
「だが、今まで以上に慎重にな」
「「「「「了解しました」」」」」
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「それは…… 本当なのかね?」
「はい、あの島が現れるまで、太平洋に島が現れる様な地殻変動および海底火山活動は…… 一切検知されていません」
「まさに魔法、まさに奇跡…… 我々の約束された地では無いかね」
「ええ、ですが…… その地を占拠して、さらに国を作った愚かな者がいます」
「しかも、愚かな大陸の大統領が国家と認め、同盟を組んだそうだな?」
「諸君、これは我々の信仰に対する侵略では無いのかね?」
「直ぐ様に報復を!」
「落ち着きたまえ…… 我等が何もしないと思うかね?」
「では…… 既に?」
「うむ…… あの島に上陸を試みて、既に数に精鋭を……「し、失礼します!!」!?」
「どうかしたのかね?」
「あの島に送り出した精鋭ですが……」
「うん? まさか、制圧してしまったのではあるまいな?」
「いいえ…… その……」
「どうしたのだ? はっきりと言いたまえ」
「上陸前に…… 気を失った状態で…… 工作船に送り返されました……」
「「「「「「「!?」」」」」」」
「お、送り返された…… だと? 何者にだ?」
「それが…… その……」
「ええい! はっきり言えと言っているのだ! さっさと言え!!」
「工作船の報告では…… 人魚だったと……」
「な!?」
その後の報告を聞いては……
その場にいた全員が疲れた顔で、頭を抱えるのだった。




