発展するD国
「あれ? あんな処…… 店あったか?」
メインの表通りの裏路地に…… 見覚えの無い店が出来ていた。
「ああ、受け入れた難民の職人の店ですね。民族衣装の装飾品を作っていたそうで…… それを活かしたアクセサリーショップを始めたそうです」
「なるほど…… なんか…… 隠れた名店みたいで、良い感じだな」
「そうですね…… 職人の商店街みたいで、雰囲気がありますね」
「商店街? 隣は…… 民族衣装の店? この辺り全部か!?」
何時の間にか…… チャイナタウンやコリアンタウンの様に…… 裏路地は難民街化していた。
「これは…… ちょっと…… 大丈夫か? 軒先貸して母屋盗られるみたいな…… 感じにならないか?」
「彼等にしたら異国の地ですから…… 民族で集まった方が安心なのかも知れませんね。ですが、ご安心して下さい! 万が一暴動が起きたら……」
「起きたら?」
「この区画をダンジョンの下層に閉鎖できますから……」
「ダンジョンの下層に…… 普通の人間だと死ぬなぁ」
ここ最近は、他国で買った廃坑に作ったサブダンジョンに大統領の依頼と…… サブダンジョンに謎の魔法陣を作って人物を捜したりとかで、D国を離れていた男は……
人口増加で急激に発展するD国に戸惑っていた。
「結局、あの魔法陣を作った人物が見付からねぇし……」
「テロリストの後始末に時間を盗られたのが痛かったですね。まさか、山中の別荘に抜け道があるとは思いませんでしたから……」
「確かに…… 結局あの部屋って、何なんだろうな?」
「それなんですが…… あの部屋に繋がる通路を調べたら、あのテロリスト達が占拠していた…… 元高級ホテルの中心の柱の中に出ました」
「柱の中? 秘密の抜け道か?」
「それが…… 柱の中の壁や床を調べたら…… 金や銀の成分が出ました。あのテロリストの予想は…… 当たっていたかも知れません」
「マジか…… あっ、もしかして……」
「はい、あの魔法陣の製作者が持ち出した可能性が高いですね」
「どのくらいにゃ?」
「そうですね…… あの広さならば…… 10兆…… もし年代物の金貨や銀貨に装飾品ならば…… 付加価値を含めて、20兆円は超えると思われますね」
「すご過ぎて…… 実感が湧かないが…… ヤバイか?」
「どの様な形で其処に有ったのか知りませんが…… あのリゾート施設は、逃亡中の元大社長の関係者が経営者でしたから…… 脱税していた隠し財産の可能性が高いですし、後々問題になるかもですね」
「う~ん…… コア、俺の収納から適当に、この世界の古い金貨や銀貨と装飾品…… 作ってくれ」
「どうするんですか?」
「あの魔法陣の対価だ…… なんとなくだが、俺と同じ様な気がするからなぁ……」
「解りました。ダンジョンへの通路を潰して、柱の中に財宝を入れて置きます。その内に発見するでしょうが…… 大統領には、それとなく報せますね」
「頼む…… その内に会うかもな」
「楽しみにゃあ♪」
まだ見ぬ謎の魔法陣製作者を思い……
男と魔王が楽し気に笑うのだった。




