捨てられし赤子達に世界樹の恩恵を……
「やはり…… 魔王ちゃまの連れて来た赤ん坊の内20人には、戸籍が在りませんね」
「そうか…… しかし、よく見ると…… 目の色や肌が違う子がいるけど、何処で拾って来たんだ?」
「近場の国の路地裏とかにゃん」
「1国では無いのですか?」
「いろいろ見て来たにゃ♪」
「おい…… 誘拐じゃないだろうな?」
「にゃんとにゃ、建物の前や路上に捨て置かれた者だけを連れて来たにゃん」
聞けば…… 寒空の中に捨て置かれた子達を連れて来たらしい。
「そりゃあ、甦生が必要なはずだ…… 聞いただけでムカつく」
「そうにゃ♪そうにゃ♪」
「しかし…… どうやって甦生しますか?」
「そうか、俺の持つ甦生薬は大人向け…… 赤ん坊に強すぎるか?」
「薄めるにも、本人達で実験する訳にはいきませんからね……」
「わにゃんに任せるにゃあ♪」
自信満々の魔王に付いて行くと……
「世界樹…… あらためて見ると…… 大きくなったなぁ……」
この数ヵ月で、世界樹は10メートルを超えていた。
「にゃあ、える~、える~?」
「あう~♪」
魔王が呼ぶと、世界樹の影から少女が現れる。
「える、頼みがあるにゃ」
世界樹の世話をする為に、コアが分体にしようとしていたホムンクルス…… それを作り直して生まれたエルフだ。
「あぃ?」
「この赤子達にゃあ、世界樹の魔力で生かして欲しいにゃ」
「う~……」
「男に魔粉肥料を作らせるにゃあ…… にゃから、頼むにゃあ」
「あい♪」
魔王の言葉に元気に返事をすると…… エルフ少女が世界樹に駆け寄り、目を閉じて触れる。
「これは……」
「魔力? 世界樹の魔力が…… 赤ん坊を包み込んでいる?」
「マスター、赤ん坊達が呼吸を始めました」
「息を吹き返したか…… 世界樹が身体に負担にならない様に甦生してくれたのか?」
「あい♪」
近付いて来たエルフ少女の頭を撫でると…… うれしそうにそうだと返事をしてくれた様だ。
そして……
「あい!あい!」
「はいはい…… 此処だと五月蝿いから、肥料作りして来るな」
激しいさいそくを受けて……
その後の数日間…… 男は、魔物の骨を焼いて砕いた魔粉肥料作りに勤しんだ。
その数日後……
「おい……」
「マスター、どうしましたか?」
「ちょっと見ないうちに…… 赤ん坊って、飛ぶのか?」
金色の髪に碧眼の赤ん坊が宙に浮いていた。
「その事ですが…… マスター、赤ん坊達は世界樹の恩恵を受けて…… 別の種族に進化した様です」
「はあ!?」
よく見ると…… 他の赤ん坊達も、口から火を吹いたり、手から水を飛ばしたり、地面に手を付いては…… 土から小さな玉を出したりしていた。




