進む議会…… その時、男は?
「大まかな事は、だいたい決まりました」
「そうか…… じゃあ、後は他の国の判例とかを参考にしたりして、問題が起きた時に話し合う事にしよう」
議会とは別のコアの分体ゴーレム娘から、男に議会での事が伝えられる。
「さーてと……」
「マスター?」
「ちょいと、出掛けて来るわ」
「どちらにですか?」
「お隣に…… ちょいとな」
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「がはぁ!? お、俺は…… 生きてるのか?」
とある山で…… 一人の男が落胆する。
その男は、経済的弱者だった。
「このウイルス騒ぎで職を失い2度目の派遣切りに会い…… 寮から追い出されて住みかも失った…… 住所が無いので、生活保護も申請出来ずに…… 18歳以上なので給付も無い…… せめて楽になりたくて…… 首を吊ったのに…… 死ねなかった…… この国の政治家はアホなのか? 経済を回したいならば、貯蓄する余裕なんて無い俺達に配れよ! 余裕なんて無いから、直ぐに全部使われるぞ! 糞がぁ~…… はぁ…… またロープのかけ直しか……」
「まだ死にたいのか?」
「誰だ!?」
不意にかけられた声に驚いて振り返ると……
「ヒィ……」
肩を黒翼丸の峰で叩きながら立つ男がいた。
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「で、連れて来たのですか?」
「そうだ」
「はぁ…… え~っと、自殺志願者の成人男性が19人に…… 成人女性が16人…… 未成年者の男子が3人に…… 女子が2人…… で、魔王ちゃま…… そのリリパット族が抱いているのは?」
「にゃあ、捨てられていたにゃあ」
「虐待されたり、捨てられた赤ん坊ですか…… 赤ん坊が23人…… その内…… 甦生が必要なのが…… 男性と女性14人と男子と女子が5人に赤ん坊は…… 20人と残りの方々も重傷ですので、直ぐに治療しましょう」
「頼むなぁ~」ガシッ!
「マスター…… どちらに?」
「いや…… ちょっと……」
「お忘れですか? 甦生には体内を循環する魔力が必要な事を…… 中学生ちゃんと女性さんに幼女ちゃんの時を思い出して下さい」
「やんなきゃ…… 駄目か?」
「はい、時間的に余裕も無いので、さっさとやりますよ」
うんざりとした様子で、男は奴隷刻印の魔導具を用意する。
「しかし…… マスターと魔王ちゃまが1日歩いただけで、この人数ですか…… 保証の無い1番の経済的弱者に給付せずに、あの国は経済を回して国民を救済する気があるんですかね?」
結局…… その日……
「ああもう! 面倒癖ぇ!!」
とある国では、〝43人〟の死亡届けが出されて……
D国に〝63人〟の奴隷が増えたが……
「次は誰だ!」
赤ん坊の泣き声に、オムツと哺乳瓶を持って走る男の姿を見て……
どちらが奴隷なんだかと、皆は笑うのだった。




