男、たまには…… ダンジョンマスターとしての仕事する。
D国に日本からの応募者が馴染み始めていた頃……
「やはり…… 洗浄が使える生活魔法スキルが人気だな」
「中には、洗浄が使えるので、3日間ダンジョンに潜り続けた応募者がいましたよ。食料と水が尽きてダンジョンから出ましたけど…… マスターの様に収納スキルを覚えたら、ダンジョン内に住み着くかもしれませんね」
「それはちょっと……」
ダンジョンの最深部で……
世界樹の隣の部屋にて、ダンジョンコアの本体と男が何やら操作していた。
「収納系は便利だが…… 自分の魔力だけだと出し入れがキツいぞ」
「一種の転送系魔法と同じ様な物ですからね…… 周囲に魔力が無い他国では、出し入れだけで魔力が枯渇しますね」
「まあ…… その事は、俺も此方の世界で知ったからなぁ…… 物語やゲームほどに万能では無いな」
「マスターは、私との契約で魔力がリンクしてますから…… 此処の世界樹が枯れない限りは、魔力切れの心配はありませんよ」
「お前と世界樹に感謝だな」
「お礼は子宝が良いです」
「それは…… その内魔王と作る」
「私へのお礼ですので、私の分体にお願いします!」
「とりあえず却下。で、話を戻すが…… グミスライムを倒すと、希に生活魔法のスキルオーブを落とす設定にするか?」
「マスターのいけず…… レア種も出して、希に回復魔法のスキルオーブを落とす様にしたら…… 如何です?」
「回復魔法か…… 需要は多いけど…… 他国で聖女や聖人にされたり、戦地送りにされないか?」
「そうですね…… 此方の世界の空間魔力量ならば、使用相手に魔力が無ければ…… 後5年くらい、ちょっとした軽傷を治すくらいしか使えないですね」
「治す相手にも魔力がいるのか?」
「彼方の世界では、空間魔力で自然治癒力や足りない血肉をある程度まで代用できるのですが…… 此方では、そこまでの空間魔力量がありませんからね。回復魔法の使い手と治療相手の魔力で、どうにかするしかないのですよ」
「前の世界では魔力様様だったんだな……」
「ええ…… でも、魔力が多いければ良い事ばかりでは…… 無いです」
「魔物か…… 世界樹の復活で、此方の世界に魔物が自然発生する可能性は?」
「前にも言いましたが、此方の世界は魔力枯渇が深刻な状態でしたからね…… 世界の自浄作用が復活して安定するまでは、魔物が自然発生する事は無いでしょう」
「安定するまでの時間は? だいたいどのぐらいかかる?」
「約…… 千年から二千年くらいですかね…… その間に核戦争などが起きなければ…… ですが」
「千年から二千年…… もう生きてはいない俺には関係無いけど…… 備えといた方が良いか?」
「そうですね……(私との契約と魔王ちゃまとの交わりで…… マスターの寿命が確実に延びるでしょうから…… 普通に生きてる可能性が高いんですが……)」
「どうした?」
「いいえ…… その他の魔法スキルオーブは、どうしますか?」
「う~ん、危険性が少ないならば…… 水魔法は出しても良いかな?」
「(まあ、その事は秘密にしましょう……)土魔法など、如何です?(魔王ちゃまよりも付き合いが長いのに…… いつまでも、私を愛してくれないマスターに…… ほんの些細な私の仕返しです♪)」
「土魔法か……」
そんなダンジョンコアの様子を……
男は気付かないまま、ダンジョンの設定を変更して行くのだった。




