応募者の30台後半と20台前半の男二人の場合
「此処が…… D国?」
大陸軍の特別機で飛ぶ事…… 数時間。
出島からD国の街に入った数十人は、圧倒されて声を上げた。
「まるで地中海の観光地の様な街並み…… リゾート地としてやれそうだな」
「こんな処で…… 何をやれば良いんだろう?」
歳が離れているし、見るからに親兄弟に見えない二人の男が話していた。
「ゲームの様な体験が出来るって話だったが……」
「どのタイプか?にもよるよ…… リアルグロじゃないと良いんだけど……」
二人は、ネット系ゲームでの知り合いだった。
30台後半の男は、低学歴のせいで上手く職に就けず……
20台前半の男は、学生時代に受けたいじめで引き籠っていた。
そんな二人は、ネットゲームの中で知り合い…… 不思議と馬が合ったので、リアルでも連絡する仲になっていたのだが……
『もう連絡出来ないかも知れない……』
ある日、引き籠りの20台前半の男に衝撃が走る!
「な、なんで…… どうして!」
『金が…… 無いんだ……』
職に就けずにいた30台後半の男は…… 電話料金や家賃、それどころか…… その日の食費にも困っていた。
『だから…… 何時、この電話が止まるか解らん…… ごめんな……』
電話から悔しそうな30台後半の男の声を聞いた20台前半の男は…… パニックになる。
引き籠りの20台前半の男にとって、30台後半の男が唯一の外との繋がりだったからだ。
自分では確認できない外の事を肉声で話してくれる人…… 20近く歳が離れた唯一の親友とも言える存在が…… 生活難で失うかも知れない。
そんなのは耐えきれる訳がない!
「なんとか…… しないと……」
30台後半の男との繋がりが無くなる…… そんな耐え難い絶望に押し潰されそうになりながら、20台前半の男は必死に寝る間も惜しみネットの海に潜り続けた。
「これだ…… これなら俺も……」
20台前半の男は…… やっとの思いでD国の募集を見付けたのだった。
そして…… 唯一の親友と言える相手から遠ざかりたくない思いから、悩んだ末に自分自身も応募する事にした。
「え~…… とりあえず、やりたい職種ごとに体験していただきます。それぞれのやりたい職種のプラカードの場所に集まって下さい」
「やりたい職種かぁ…… 何にする?」
「何にって…… 何があるんだか!? あ、アレ……」
「あれ?……って、冒険者なんて職種があるのかよ!?」
「どうしました?」
急に大声を上げた二人に、案内役のゴーレム娘が近付く。
「あ、あの…… ぼ、冒険者って…… どんな事をするですか?」
「冒険者ですか? 主にダンジョン探索ですね」
「「ダンジョン!?」」
二人とゴーレム娘の話を聞いた数十人の応募者達の5分の4が…… 冒険者のプラカードに殺到するのだった。




