D国の日常風景
「セ、センセイ、サヨウナラ」
「「「「「「サ・ヨ・ウ・ナ・ラ」」」」」」
「はい、さようなら。また後でね」
数十人の子供達と、まだたどたどしい日本語で挨拶して……
(夕飯の時に、あのお店で会うんだけどね……)
日本からD国の学校の教員になった桜は、この後で夕飯一緒に食べる子供達を笑いながら見送る。
「美味しいけど…… まともな飲食店がメイド喫茶一軒だけて…… 大丈夫なのかな?」
D国は、街等の整備は先進国の都市並みに整っていたが……
国民のほとんどが…… 難民孤児と元少年少女兵の子供達だけの為に、テナント募集状態のままに放置されてる建物ばかりだった。
「一応、欲しい物とかは事前に申請するば…… 直ぐに支給してくれるから困らないけど…… でも、たまにはお店で買い物や食べ歩きとか…… したいなぁ~」
この桜のつぶやきを……〝彼女〟は聞いていた。
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「そろそろ我が国でも、家電や衣服の生産と販売をするべきです」
「どうした急に?」
「マスターの作った大通りの建物1階のほとんどが空き店舗のままです…… 我が国の都合から他国のブランドやメーカーを入れるのは難しいので、我が国のブランドやメーカーを作り、空き店舗を埋めるべきです」
「まあ…… 何時までも無人の街ではなぁ……」
「とりあえずは、彼方の衣服等を此方に合わせてデザインし直して製作致しますね」
「ああ…… その辺は、よく知らないから店長や女性陣に意見を聞いてくれ」
「了解しました。店舗の人員については、当面は新たに私の分体ゴーレム娘を責任者として、人に近い姿の種族や妖怪達を店員として配置する事にします」
「もし、彼奴等が希望したら…… 職業体験させてやってくれ」
「了解しました」
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~ 数日後…… ~
「あっ、お店が出来てる! 昨日は無かったのに…… クラシカルなワンピースとかの服がいっぱいの服屋さんかぁ…… 可愛いけど、もうちょっと動きやすいジャージとかカジュアルなのも欲しいかな」
「セ、センセイ。イラッシャイマス?」
「あれ? この場合は、いらっしゃいませ。が、正しいかな…… 何してるの?」
「イラッシャイマセ。エ~ット…… ショ、ショクギョウタイ?」
「職業体験ですよ。他国からの先生ですね? 希望した子供達に店員のお仕事を教えて、体験してもらっていたんですよ」
「職業体験ですか?」
「この国の子供達は、難民孤児と元少年少女兵ですからね…… 買い物どころかお金等の事すら解らない様な子達ですから、言うなれば…… 将来の為のリハビリみたいな事ですかね」
「買い物を知らない……」
「ですので、他国の日常等も教えてあげて下さい」
「は、はい! がんばります!」
「ほどほどで良いですよ。ほどほどで……」
次の日から、ダンジョンコアの分体ゴーレム娘の言葉が聞こえてない桜により……
「今日は、私の国での日常について教えるね」
買い物等を知らない難民孤児や戦場しか知らない元少年少女兵達に、普通の日本の一般的な日常常識が教えられたのだった。




