男、呪縛を祓う。
(ああ…… またか……)
小学生の少年が…… 薄暗い教室の1席に座っていた。
「おまえ、ほんとうにバカだよな」
何時の間にか…… 薄暗い教室を黒い影達が埋め尽くす。
その全てが…… 少年を嘲笑う。
その影達は…… 男の呪縛…… 幼少の頃から言い続けられた周囲の評価が……
男の心を縛り、洗脳とも言える言葉達が心を削り取る……
「おまえは、どうせぇなにしてもムダなんだよ」
男を取り囲む様々な年齢の影達の嘲笑いが激しさを増す……
「ああ…… そうだな…… だから、俺は…… 別の国を作ったんだよ」
嘲笑う声が止まり、影達が男を見て止まる。
「じゃあな……」
小学生の姿の男は、光る一人の少女の手を取ると……
「もう…… 二度と来る事は無いなぁ……」
小学生の姿の男は、光る少女と薄暗い教室を出る……
その時…… 光る少女は、男に無邪気な笑みで微笑むのだった。
「やっとかよ……」
何時からか…… 見る様になった夢に別れ告げた男は……
「う~ん…… にゃあ……」
隣で眠る魔王少女を見て……
「ありがとうなぁ……」
男が魔王少女の頭を撫でると……
「うにゃあ~……」
魔王少女が…… 抱っこねだる子供の様に腕を突き出したので……
「よしよし…… まだ早いから寝てような」
魔王少女を抱き寄せて、男は再び眠りに就くのだった。
そして、男は…… 二度とあの夢を見る事は無かった。
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「むう…… 最近、マスターと魔王ちゃまが近過ぎる気がします……」
「そんにゃ事にゃいにゃあ……」
「普通だろ?」
「いいえ、絶対に前よりも距離感が近いです! 現に、マスターから私に流れる魔力が増えました! そろそろ何かしらで放出しないと危険なくらいにですよ!」
「そいつはヤバイなぁ……」
「にゃあ!? どうするのにゃあ?」
「今の状態を緩和するには……」
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「良いか? お前達、絶対に島の外洋に出るなよ!」
首都の中央部に作った水路の中心の泉には…… 人魚達が集まって、男の話を聞いていた。
「ダンジョンの魔力で人魚族達を産み出しました。これでしばらくならば、ダンジョンが沈静化するでしょう」
「そろそろ…… ダンジョン内の魔力緩和の為にも、定期的なダンジョン攻略をさせないとなぁ……」
「この島だけで種族を増やし続ける訳には、いきませんからねぇ……」
「女子中学生と妖怪達に引率してもらい、孤児と元少年少女兵から希望者を募って、ダンジョンに潜ってもらうか?」
「この世界でも、何が起こるか予想出ませんから…… あの子達の生存率を上げる意味でも、有効だと思われます」
「そうだな…… 念には念をって、奴だな?」
こうして、ダンジョンに潜る事になったD国の国民の子供達は……
「サンダーアロー!」
ダンジョンで魔物を倒した事により……
スキル持ちになるのだった。




