難民孤児、男を崇める。
おれの名は…… アラン。
ついこないだまで…… 内戦が続く国の崩れた街にいた。
「なあ、お前…… 親は?」
何時もの様に…… 腹を空かして、崩壊しかけた街の片隅で食い物を探し歩いて……
疲れ果て、路地裏に倒れたおれに……
その人は…… 話し掛けて来た。
「い、いない…… ながれ玉に当たって…… 死んだ」
「そうか…… 家族はいるか?」
「いもうとがひとり……」
「なら、生きないとなぁ」
そう言うと…… おれに飲物をくれた。
「炊き出しでもするか…… これもやるから、妹を連れて来な」
不思議なのど越しの飲物を置いて、あの人は拓けた場所に歩いて行った。
おれは、崩れ欠けた物置小屋に隠れていた妹に、あの人に貰った飲物を飲ませた。
(痩せてるなぁ……)
骨が浮き出る妹の腕を見て…… あの人の言葉を思い出していた。
(妹を連れて来いって…… 言っていたなぁ……)
飲物を飲んだからか、不思議と元気になった妹を連れて…… あの人を探す。
「おにいちゃん、いいにおいがするよ?」
「ほんとうだ…… あそこかな?」
「おっ! ちゃんと来たな」
そこには、おれ達の様な子供達に食事を振る舞う…… あの人がいた。
「おいしいね♪」
「ああ……」
あの人がくれた食事に、妹が無邪気に笑うのを見て……
(笑った……)
忘れていた妹の笑った顔に…… 不思議と涙が出た。
「うちの子になるか?」
みんなが腹いっぱいになった頃に…… あの人がおれ達に聞いて来た。
おれ達の答えは…… 決まっていた。
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「今日から、此処がお前等の国だ」
おれ達は…… 海の真ん中にある島にいた。
「先ずは…… 家からだな」
島には…… おれ達の街以外にも集めた子供達がいた。
その子供達を連れて…… あの人が真っ白できれいな街並みを歩く。
「全部空き家なんだがぁ…… 子供一人に一軒って、寂しいよなぁ?」
おれ達は頷いた。
「なら…… しばらくは集団生活だな」
あの人の案内で、大きな建物に着いた。
「先ずは…… 健康になれ! 寝床と食い物に服と靴…… 他に必要な物も用意してやるから、ちゃんと元気に育てよ!」
その後は、今までの生活が嘘だった様に…… がらりと変わった。
一日に三食とおやつを食べて、遊んで、風呂に入ると、旨い飲物を飲んで、ベッドに眠る……
崩れ欠けた街にいた時とは、大違いに幸せな日々……
だから、時々思う…… おれは…… 死んだ?と……
おれ達は、死んでいて…… あの人が天国に連れて来てくれたんじゃないか?と……
「ばぁ~か、死んだら…… 飯なんか食うかよ」
不安になって、一度聞いて見たら……
そう言って…… あの人が笑った。
その一言と、あの人の笑顔で……
おれ達は…… 生きているんだと…… 安心して……
「兄ちゃんだもんなぁ…… 辛かったよなぁ…… 今は、泣くだけ泣いとけ…… 次は、笑う為になぁ……」
おれは…… 泣いていた……
その時、おれには……
あの人が神様に思えたんだ。




