神獣来たら…… いろいろ来た。
「よう…… 飲むかい?」
綺麗な三日月が浮かぶ深夜に、ダンジョン化した山奥で……
男が酒瓶をぶらさけて、白い狐に話しかける。
『お前は…… 何者?』
「何者って…… 40のおっさんだな」
『お前には…… 霊力がある』
「霊力…… 魔力の事か?」
『魔力…… 魔力とは、何だ?』
「魔力って言うのは…… 此方での霊力か?」
「その様ですね」
『女…… お前は、生きていないな…… もののけの類いか?』
「もののけと言う存在は、存じませんが…… この身体はゴーレム…… 人形ですので、生きては居ませんね」
『ふむ…… 一つ問う。この山は…… 何故、霊力に満ちている? あの童は、何故に霊力があるのだ?』
「問いが二つになってるけど…… それは、俺が別世界の物を持って、生まれたからだな」
『別世界…… だと?』
男は、これまでの事を白い狐に話した。
『なんと…… 別の世界からの転生者とは……』
「それで…… あんたは、何者んだ?」
『私は…… 白狐…… かつて、強き霊力を持つ陰陽師と供に都を護りし、獣神だ』
「護り神って事か? そんなあんたが…… 何故に、此処で娘ちゃんと遊んでる?」
『私は…… 消える寸前だった…… しかし、感じたのだ…… かつて、この国、この世界に満ちていた霊力の匂いを…… その匂いを辿る先で…… かつての陰陽師の様に、霊力を持つあの娘に出逢い……』
「契約したのですね?」
『うむ……』
「契約って…… 神獣だろ? 娘ちゃんは大丈夫なのか?」
『今は…… 大丈夫……』
「確かに、今の娘ちゃんは、マスターとの奴隷契約で、マスターの魔力が身体に満ちているので、問題は無いでしょうが…… ダンジョンの範囲外では、大気中の魔力の濃度が低いので…… 危険では?」
「おい!」
『その事で、契約者の娘を護る為に…… 一つ、私の願いを聞いてくれないか?』
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「これで…… いかがです?」
男と白狐が話した翌日の朝に…… 山奥の中に、立派なお社が建っていた。
『うむ、この地ならば…… 契約者の霊力を吸わずに居れる』
白狐は、朱色の鳥居に柱と白漆喰の壁が真新しい社を見て、満足気に頷いた。
「ほう~、よいの」
「ああ、中々に立派じゃねぇか!」
「根城に…… よいな……」
何時の間にか、長鼻の隠居とムキムキ筋肉青年と影が薄い男性がいた。
「どれ、わしが住んでやるかの」
「おい、天狗の。俺が住む社だろうが!」
「いや…… わたしだ……」
『何者だ、貴様等は! 此処は私が建てて頂いた社だ!』
突然現れた3人と、白狐が睨み合う中……
クイクイ……
「うん?」
「わたしも…… ここにすむ……」
着物姿の少女が、男の裾を引っ張っていた。




