前世では…… 持ってるだけで重罪のアイテムその2
「ここが底か……」
ダンジョンコアの力で、自分が落ちた穴の全体図を理解した男は…… 世界樹の跡地の最深部にいた。
「やっぱりか……」
無限収納から取り出した前世の愛用魔導ランプで、周囲を照らしながら調べると、ほぼ朽ち果てた〝化石化した世界樹の根〟を見つけた。
「最近の異常気象は…… 世界樹が無くなって、自浄出来なくなったからか…… となると、〝アレ〟が必要なんだが……」
化石化した根を見て、男が再び無限収納を開く……
「〝コレ〟…… 使えるか?」
男が取り出したのは…… 緑色のピンポン玉くらいの宝玉の様な〝種〟だった。
「これも…… ハイエルフ達の秘宝で不老長寿の秘薬とホムンクルスの原料になるって…… 昔の錬金術国家がホムンクルスの暴走で滅んでから、ハイエルフ以外が持ってると重罪になったなぁ」
そう言うと…… 男は無限収納から適当な剣を取り出した。
「現代日本じゃあ…… 完全に銃刀法違反だな!」
男は、化石化した世界樹の根の中心部に剣を突き立てる。
「おっ! 意外と簡単に穴が空いたな。後はこの種を……」
突き立てた剣を引き抜き、男が空いた穴に宝玉の様な種を押し込む。
「せっかく生きる気になったのに…… 世界が無くなったら困るからなっと」
男が穴に押し込んだ種は……〝世界樹の種〟だった。
「前世で…… 確か、ハイエルフの少女に貰ったんだよな…… 育つかな?」
前世で…… 男が勇者に会う前に、森でオークに襲われたハイエルフの少女を助けた事があり、その時に貰ったまま無限収納に収納していたのだ。
「何か…… 水とか必要かな?」
家庭栽培くらいしか知識が無い男は、無限収納をあさりながら適当なアイテムを引っ張り出していた。
「え~っと…… 水と肥料…… 肥料…… って、棺桶だと!? しかも……(ゴトゴト)何か入ってるよ…… そう言えば死体が埋ってるのは…… 桜の下だけか?」
男が棺桶を見直す……
「でも…… 棺桶なんて…… 前世の俺は入れたか?」
見覚えの無い棺桶に、男が首を傾げていると……
ガタガタ…… ドッタン!
「うおい!? う、動いた……」
立て掛けた棺桶が、急に震えて倒れた!
「いくら無限収納でも…… 生きた動物は入らないはずだったんだが……」
ガタガタ…… ガタガタ…… ガタガタ……
「何か…… テーブルでマナーモードの携帯みたいに激しく震えてるが…… 中で虫の卵でも羽化してないよな?」
男は、棺桶の中で〝黒光りするG〟が大量発生したのを想像してしまった。
「うげぇ~、出すんじゃなかった…… 殺虫系のアイテムあったか?」
男が、無限収納から殺虫系のアイテムを取り出した時!
ガンガン!…… バン!!
「なっ!?」
棺桶の蓋が飛び、中から……
「ふっ…… はぁっはっはっはっ! われ、ふっかつ!」
130㎝くらいの少女が仁王立ちで現れた!
その姿は…… 生まれたままの姿だった。