前世からの持ち込みで、世界樹とエルフ少女のごはんを作る。
「あう…… あ!」
「いっ!? てて…… 急にどうした?」
「あぅあ! あぅう……」
「どうやら…… 世界樹の事を伝えたい様ですね」
エルフ少女は…… 急に自分を抱き抱えてる男の髪を引っ張り、まだ小さな世界樹の苗を指差して、何かを訴える様に声を上げた。
「で…… どうすればいいんだ?」
「あう! あぅうあ…… あい!」
「うん?…… 全く、解らん!」
「世界樹を指してから、地面を叩いてますね…… ひょっとして、土に問題があるのでは?」
「土に…… 肥料が欲しいのか?」
「あぅあ♪」
蕩ける様な笑顔で、エルフ少女が頷いた。
「正解の様ですね…… 世界樹には、どの様な肥料が良いのでしょうか?」
「さあ…… よく解らんから、ホームセンターで適当に買って来るかぁ……」
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~ 数十分後…… ~
「とりあえず…… 園芸用の土と肥料を、数種類買って来たぞ」
「あぅあ!」
「あっ!? やめろ! 肥料を口に入れるんじゃない!」
「だあ~……」
「ほらみろ! すぐに洗浄してやるから、口を大きく開けろ」
「うぅ…… あぅあぅあ~!」
「何だ? どうした?」
「この肥料では、ダメなのかも知れませんね…… ひょっとして、土や肥料にも、魔力を含む物が良いのでは?」
「魔力を含む肥料かぁ…… 確か、小魚とかの骨を肥料する農法があった様な…… なら、魔物の骨でも…… 肥料に出来るんじゃねぇ?」
「試して見ては?」
「そうだな。これなんて…… どうだ?」
「あぅあぁ~♪」
「とても嬉そうに顔が蕩けてますが…… 何の骨でしょう?」
「ワイバーンの足の骨だ」
「…… 彼方の世界ならば、冒険者や傭兵が欲しがる上級武具の魔物素材では?」
「魔王の空軍の主力が、ワイバーン乗りだったからなぁ…… 無限収納に千匹以上…… 入ったままだ」
「流石は、元勇者の荷物持ちですね。それにしても…… 肥料にするには、でか過ぎでは?」
「だなぁ…… 砕くか?」
「肥料とするならば、炎系魔法か魔導具で焼いて浄化すると良いかと」
「魔物の骨だしな」
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パチパチ…… ゴリゴリ……
「あぅあ♪」
「これ! つまむなら、こっちにしなさい」
「あい~♪ ちゅぱちゅぱ……」
「エルフって…… 骨をしゃぶるのか?」
ダンジョンの中層で…… 世界樹の肥料を作る為に、男は数日間…… ワイバーンの骨を焼いた。
「う~ん♪ ちゅぱちゅぱ……」
その隣には…… 蕩けきった笑顔で、男が焼いて砕いたワイバーンの骨をしゃぶるエルフ少女と……
「にゃあ…… 浮気にゃあ……」
物影から二人を睨む魔王少女がいるのを……
「世界樹の分が無くなるから、あんまり食うなよ?」
男は、まだ気付いていなかった。




