前世では…… 持ってるだけで重罪のアイテムその1
「マジかよ…… ステータスが見えやがる…… こりゃあ…… 夢か?」
今だあの世に向かって、フリーホール中の男から笑いが漏れる。
「スキルは…… な!?〝無限収納〟だと……」
男のステータス画面のスキル欄には、男の前世のスキル〝無限収納〟の文字があった。
「くっ! 前世のスキル持ちだったとは…… このスキルを知っていれば…… 子供の頃に憧れたアニメの様な大泥棒になれたかもな。さて、どうせ空だろうが……!? 何故入ってやがる!」
無限収納を使った瞬間に、男の頭の中に無限収納の〝中身〟がリストアップされた。
「おいおい…… まさか、前世の荷物も引き継いだのかよ?」
リストを見て…… 男は思ってしまった…… 生きたいと……
「あ~…… ちきしょうがぁ…… どうにか出来ちまうじゃねぇかよ!」
男が無限収納から取り出したのは…… 薄汚れた古い1畳程の〝絨毯〟だった。
「浮け!」
男の声に反応したのか? 絨毯がうっすら光ると…… なんとか絨毯を腹這いにしていた男の落下が止まった。
「アラジンの魔法のランプとかも、転生者が持ち込んだ可能性があるな……」
なんとか浮いた〝空飛ぶ絨毯〟の上で…… 男が一息ついた。
「しかし…… なんて深さの穴だ…… まさに底無しだな」
落下していた速度からも、明らかにおかしい深さの縦穴の底に男が目を向けるが……
「おかしい…… この光が見えない穴の中で…… どうして、俺は〝絨毯と自分の姿〟が解った?」
まったくと光が届かない穴の中で、男は前世で感じた感覚を思い出した。
「この感覚は…… 魔力? いや、精霊力に近いが…… 薄いなぁ…… やはり、微量に魔力が流れている…… まさか、地球のダンジョンか?」
前世で男が、勇者達の荷物持ちとして幾度となく潜った危険地帯…… 〝ダンジョン〟と同じ様な空気が流れている。
「確認するには…… 底に行くか……〝こいつ〟を使うか……」
男は無限収納から、大きめのバランスボールぐらいの〝黒い球体〟を取り出した。
「前世では、数百年前くらいに馬鹿な野郎が〝こいつ〟で都市をダンジョンにしてから、持ってるだけで重罪のアイテムになったが…… ダンジョンかどうかは…… この〝ダンジョンコア〟の反応を見れば解るだろう」
前世で、魔王の戦略兵器【キャスルギガンテス】の動力に使われていたダンジョンコアを使うと……
「うぐぅ…… マジかよ…… もうすぐ地球が終わるのか……」
ダンジョンコアを使った男の脳裏に、男が飛び込んだ穴の正体が浮かぶ。
「まさか…… この穴が〝世界樹の跡〟だったなんてなぁ……」
そこは、地球の命とも言える世界樹が朽ち果てた場所だった。