明日を生きる為のダンジョン作りその5
「灯りがない…… コンクリート剥き出し…… 錆びた鉄の扉って…… 事件性しか感じない間取りなんだが!」
「にゃあ~…… フロの方にゃ、豪華にゃあ」
「あれは風呂と言うよりも、大規模なプール施設だからな」
『その大規模な温泉娯楽設備を作った為に、魔力よりも建築素材が足りなくなりました』
「あのプール設備…… 温泉だったのか?」
『はい、源泉かけ流しの美人と子宝の湯です。それで通常ならば…… ダンジョンは成長する過程で、徐々に魔力から建築素材などのアイテムを増やして溜め込むんですが…… あの設備を作る過程で魔力を建築素材にしたアイテムが底をつきました』
「で、俺達の部屋が地下倉庫みたいになったと?」
『はい、現状で1番の残り建築素材で作れる強固な部屋です』
「確かに、頑丈かも知れんが……」
「にゃ、にゃあ~…… あれにゃくるにゃ…… にゃのエルフの様にゃ恐いにゃがくるにゃ……」
魔王少女が廃墟や地下倉庫の様な部屋に、さっき見たエルフのゴーストを思い出して、床に震えながら染みを作る。
「これじゃ無理だな…… 端から見ると少女監禁の事件現場にしか見えん。せめて…… 照明があれば!?」
男が魔導ランプで天井を照した時、何時の間にか付いて来たシルキーが天井で微笑む。
「脅かすなよ…… やはり、照明が必要だ」
『この広さを照らす魔導具となると…… 3日は必要です』
「にゃあ!?」
「3日…… 持たなそうだな。期間を縮める方法はあるか?」
『素材となる物があれば、製造時間の短縮する事が可能です』
「素材か…… 確か、穴に飛び込む前に山の中で不法投棄された建築資材と家電を見たな…… 拾って来るか? ダンジョンの…… この穴から出れるか?」
『まだ階層などが手付かずですが、入口に転移陣の設置が可能です』
「戻って来る事も出来るのか?」
『マスター登録してくだされば、入口の転移陣で私の処に転移可能です』
「じゃあ、転移陣を設置してくれ。外の不法投棄を拾いに行くから」
「外にゃ!? わにゃんも、わにゃんもいくにゃあ♪」
「ゴミ拾いだぞ?」
「ここに一人にゃ、いやにゃあ!」
「コアとシルキーがいるだろう?」
「もっといやにゃあ!」
『ガーン!? な、何故です!』
「いや…… お前等、ホラー演出で悪戯してたろうが」
『チィ!』
「舌打ちした!?」
『あ~はい! マスター登録するんで、ちゃっちゃっと私の穴に腕を突っ込んで下さいね~』
「猫被っていたなぁ?」
『何の事ですかぁ~? 私はただの球体型ダンジョンコアですよ♪ いや本当に』
「どんどんあやしくなってるけどなぁ!」
『そんな事よりも、マスター登録! ほら早く、その太いの下さい♥』
「うっ…… 登録したくないんだが……」
「はにゃくするにゃあ!」どん!
「あっ……」ズホッ……
『あ~ん♥ 入りました♪ これより、マスター登録の因子採取を開始しま~す♥』
ガッシ! ブスブス……
「いっ! いってぇ~!?」
暗闇の中を…… 男の叫びだけが響き渡るのだった。




