買い占めと囚人のジレンマ
・人物設定
A:20代女性システムエンジニア、東京在住
Bとルームシェアしている。
B:20代女性、OL、東京在住
Aの従妹
C:20代 Aの彼氏
■部屋
(Bのナレーション)
外出自粛要請が出て、不安であったけど、幸いAと一緒に住んでいたから少し落ち着いている。
いつもは馬鹿なことしてきたりして、うざいって思うこともあるけど、こういう時は冷静にいるから心強い。
A:「囚人のジレンマ」というのを知っている?
B:何?それ?
A:ある理論の一つの例題なんだけど
ある二人組強盗が捕まった時に、自白して相手が黙秘の場合、自分は無罪、相棒が長期刑、
お互いが黙秘の場合は、、、
B:あっ、それ知ってる。お互いが黙秘することが最適なのに、互いに無罪になる可能性に掛けて自白
して、中くらいの刑になる話ですよね。
A:そう。よく知っていたね。
A:本来、互いにとって最適なものは黙秘すること。この理論を知っていることもそうだけど、その回答を
するためには何が必要だと思う?
B:うーん、、、何だろうな?
相手を信用、信頼すること?
A:うん、そうだね。自分もそう思う。
A:この理論を知っていても、相手が信頼してなければ、また相手からも信頼されていなければ黙秘という
選択はできない。人間は理論だけでは動かない。
B:へぇー、やっぱりそうなんですね。
A:何が?
B:いや、学生のころ、説明だけぎっちり教える授業よりも興味を持たせてくれた授業のほうが自分にとってよかったな、って思って。
A:まぁ、そうだね。当たり前だが理論は大事。でもバランスが重要。
理論だけで押し付けるよりも信頼などでフォローすることで最適な答えに導くことが重要だ。
理論というのは一つの要素であって、それだけで決めるものではない。信頼やそれ以外の要素もあって、それらを総合して結果を導くことがマネージメントとして大事なことだと思うよ。
B:コロナウイルスの時に日本だけではなく、世界で買い占め騒動にありましたよね。
あれも同じような感じですよね。
A:そうね、理論でわかっていても実際にモノが無くなってしまう恐怖に駆られて、
買わないといけない感情になってしまう。
A:自分も囚人のジレンマの話は分かっているつもりではあったけど、実際に起こってしまうと冷静にいら
れるのは難しいとも思った。
でも、ある人が教えてくれた。
■Cの部屋(回想)
A:近いうちに買っておかないと思ってたら、急にどこもないんだもん。
焦ったよ。
C:トイレットペーパーがなくなるとは思わないよ。
A:そーだよね。Cは大丈夫なの?
C:もう一つあるし、まぁ、俺は男だから、いざとなれば新聞紙で代用するよ。
Cを見つめるA
■部屋
A:新聞紙で代用するって、言われた時、はっとした。
別にトイレットペーパーがなくても生きていける。
代用できるものがあるんだ、って。
B:まぁ、確かにそうだけど、、、私は新聞紙で代用なんて無理。
A:そうね。(微笑)
でも、原点の捉え方、トイレットペーパーが絶対ないといけない、
ではなく、なくてもなんとかなる、という考えは大事だし、
囚人のジレンマ、そのベストな選択をするためには無我の境地っていうのかな?
イチではなく、ゼロの感覚というのが大事なんだなって思ったよ。
B:どういうこと?
A:感覚的にだけど、社会・組織でパニックが起こった時に、
誰かが汚れ役といえばいいのかな?不利益なことを受け持つことで健全化する。
そしてそれをやれるには欲を捨てる、「無」になれることなのかな?
って思った。
B:無欲、、、
無、我、、の境地かぁ、、、
それでも私はトイレットペーパーの代わりに新聞紙は使えないよ。
A:私もよ。
B:でも、私、何かの欲は捨てられるような気がする。
自分のためではなく、他人のためにやろうとは思える。
A:不思議だよね。
B:何が?
A:資本主義という時代になって、世界で競争しているのに、
こういう危機的な状況では無欲になったほうがいいなんて、、、
視線でAにわからないと答えるB
A:囚人のジレンマ、最適な解は各々ができる範囲のマイナスを受け持つ。
それが最適な答え。
でも、実際はみんな不安でそれができない。
だからみんなのために無欲になれる最初の一人が大事。(ファーストペンギンという考え)
誰かが違う行動するまでは、、、多くの人は流れに乗って動いてしまう。
A:買い占めをする人って、
短期的に見れば、物が足りて充足感を持つけれど、
長期的、巨視的にみればそれが最善の答えにはならない。
「情けは人の為ならず」ではないけど、いいことも悪いことも回りまわって、
自分に返ってくる。
B:・・・
B:囚人のジレンマから情けは人の為ならず、、かぁ。
B:すごいね。
A:うん、そういうことできる人ってすごいよね。
Aを見つめるB